過給を強化するために圧力比を大きくすると、二つの理由でターボによる応答の遅れ(ターボラグ)が問題になる。一つめは圧力比を高めるためにターボの回転数を上げる必要があること。最高回転数に達するまでの時間が長くなり、ターボラグが増える。もう一つは自然吸気のときと過給したときのトルクの違いが大きくなるためターボラグを感じやすくなることだ。しかも低燃費エンジンは排ガスの温度や圧力が低く、ターボを加速する力が弱い。

 例えば超希薄燃焼では空気過剰率2.2以上を想定している。排気量を増やせない場合、圧力比が2.2のターボを使ってやっと現在の自然給気・ストイキ(理論空燃比)燃焼並みの燃料を噴ける。2.2というのは1段ターボでは上限に近い数字だ。何か対策を打たねば間違いなくターボラグは激しくなる。

 その対策として、電動過給機はぴったりだ。低燃費エンジンの開発者はこれに期待しているはずだ。ただし、高くては手が出ない。低燃費エンジンは数を出して全体のCO2(二酸化炭素)排出量を減らすことに意味があるからだ。

 電動過給機には米BorgWarner社と米Honeywell社、IHI、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(三菱重工)、フランスValeo社、カナダMagna社などが一斉に名乗りを挙げた。お互いに区別を付けにくい中、三菱重工の低コスト指向が光る。無冷却とし、新モーターの開発に力を入れる。

 コンプレッサーは圧縮によって空気が発熱する。モーターの巻き線とインバーター素子、軸受なども発熱する。耐熱性が低い永久磁石やインバーター素子を守るため、他社はすべて水冷している。