昨年開催したエスカーアジア2016の会場風景
昨年開催したエスカーアジア2016の会場風景
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 ドイツVolkswagen(VW)社は、部品メーカーの選定時にセキュリティー技術を重んじる方針を固めた。自動車のハッキング対策が重要になる中、車両開発の前段階から部品メーカーと意思疎通を図ることが必要だと判断した。部品の選定時からセキュリティーを考慮しなければ、実際の開発に移った後で対策するのは難しいと考える。

 2017年9月4~5日に東京都内で開催する自動車セキュリティーの国際シンポジウム「escar Asia 2017(エスカーアジア2017)」(主催:日経Automotive・ETAS社)で、VW社や日本の自動車メーカーなどで構成するソフトウエア標準化団体JASPARなどが、自動車セキュリティーの開発方針を発表する。

 VW社は自動車セキュリティーに関わる2種類の文書を作成し、部品メーカーに要求する。2種類とは、「車載暗号」と「ECUに求める要件」。暗号については、アルゴリズムの種類や暗号鍵の長さ、乱数生成などについて記した。後者のECUへの要件では、ECUに搭載するソフトウエアなどの真正性や完全性に関するVW社の考え方を示す。VW社への部品納入を検討するメーカーは、メーカー選定の前段階で文書を見られる。VW社はセキュリティー技術の進化が速いことを考慮し、約18カ月ごとに文書を更新する計画だ。

 自動車セキュリティーについては、「他社と同じ水準で十分」(自動車メーカーの技術者)と考えて「非競争領域」と見る自動車メーカーは多い。日系メーカー各社は、JASPARでセキュリティー技術の標準化に力を注ぐ。JASPARの橋本寛氏(本田技術研究所主任研究員)が、エスカーアジア2017で標準化活動の最新状況を報告する。

 自動車のセキュリティー対策がとりわけ重要になるのが、自動運転技術の導入時である。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2016年に公表した自動運転車の指針案。その中でセキュリティーを重んじる考えを示した。日本でも、自動運転時代を見据えたセキュリティー技術の開発について議論が始まっている。内閣府参与の齋藤ウィリアム浩幸氏が、自動運転技術を実現する上で必要なセキュリティー技術について講演する。