デンソーの大型培養施設
デンソーの大型培養施設
[画像のクリックで拡大表示]
乾燥させた藻
乾燥させた藻
[画像のクリックで拡大表示]
藻を開発する渥美氏
藻を開発する渥美氏
[画像のクリックで拡大表示]

 デンソーは、藻(も)の大型培養施設を熊本県天草市に建設し、2016年7月27日に開所式を開催した。藻から造るバイオディーゼル燃料(BDF)が、化石燃料のディーゼル燃料と価格で競える水準にする道のりは長い。デンソーは2030年以降を見据え、大型培養施設で低価格化技術を開発する。2018年度に、年間2万Lのバイオ燃料を製造できると見込む。

 藻は、5万種あるとされる。そのうちBDFに適した藻としてデンソーが選んだのが、緑色の単細胞植物であるシュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)だ。油を直接作る特徴がある。加えて成長するのが速い。さらに、多くの植物や細菌にとって厳しい環境とされる酸性の培養液で成長する。屋外で育てたとき、培養液に雑菌が入りにくい。

 シュードは厳しい環境で成長する特徴があるとはいえ、植物である。もちろん、外部環境の影響を受ける。そのシュードを屋外で育てる上でデンソーの技術者がとりわけ苦労したのが、研究拠点がある愛知県と大型培養施設を造った熊本県天草市で、大気中の細菌の種類が異なることだった。その違いが、シュードに大きな影響を与えるという。藻を開発する渥美欣也氏(デンソー新事業推進部認定プロフェッショナル・技師)は、「天草市の大気中にいる細菌を考慮した培養液に調整する作業に時間がかかった」と打ち明ける。