7月から試験的に先行導入した新型燃料電池。奥の2台はモックアップ
7月から試験的に先行導入した新型燃料電池。奥の2台はモックアップ
(出所:日経BP)
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「ゆめソーラー館やまなし」と屋根上の太陽光
「ゆめソーラー館やまなし」と屋根上の太陽光
(出所:日経BP)
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太陽光の余剰電力で水素を製造して貯めて置く
太陽光の余剰電力で水素を製造して貯めて置く
(出所:日経BP)
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 山梨県企業局は、再生可能エネルギーで自活する実証を続けている見学施設「ゆめソーラー館やまなし」に、今年10~11月に新型の純水素型燃料電池システムを3台(0.7kW/台)導入し、夜間も含めほぼ系統電力に頼らずに運営できる体制を構築する。

 「ゆめソーラー館やまなし」は、再エネ関連の展示施設で、ピーク需要は約10kW。屋根上の太陽光発電(出力20kW)と雨水を利用した小水力発電(1.5kW)を、3つの蓄エネルギーシステムに蓄えて、館内の電力需要を賄っている。導入している蓄エネ設備は、電気二重層コンデンサ(3kWh)、Liイオン蓄電池(約30kWh)、水素製造装置(約30kWh相当)だ。水素製造装置で作った水素は、燃料電池システムで電気に再変換する。

 東京電力の電力系統にも連系しており、最終的な需給バランスの維持は、系統への逆潮(売電)と受電(買電)で、調節している。

 これまで燃料電池は、パナソニック製の定格出力0.75kW機が1台だった。同社が、都市ガスを燃料にした既存の燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システム「エネファーム」をベースに、改質器を外すなどして純水素型に改造したものだ。

 パナソニックは、燃料に純水素を使うことを前提に設計した新型の純水素型燃料電池システムを開発しており、このほど先行して1号機を「ゆめソーラー館やまなし」に設置し、旧型に代替した。今秋までにさらに2台を設置することになっている。

 新型機は、旧型に比べコンパクトで、定格出力は0.7kWとなる。旧型は、定格出力以下の部分負荷での運用を前提にせず、オン・オフ制御しかできなかった。新型では、定格出力以下の部分負荷でも運転することを前提に設計されているのが特徴という。

 これまで「ゆめソーラー館やまなし」では設備の待機電力が、燃料電池の定格出力を下回ってしまうことも多いため、水素燃料に余裕のある場合でも、閉館後の夜間は東京電力からの受電で賄っていた。山梨県企業庁では、部分負荷で運用できる新型燃料電池に切り替えたことで、今秋以降、夜間の待機電力も燃料電池からの給電で賄う方針という。

 同館では、太陽光の余剰電力でまず、電気二重層コンデンサとLiイオン蓄電池を充電し、それでも余剰のある場合、水素を製造している。これまでの運用では、週1回の休館日の余剰電力も使うなど、水素タンクにはかなり余裕があるという。そこで、燃料電池を3台(合計出力2.1kW)に増設して、雨天や曇天時など太陽光の稼働率が低い場面での燃料電池からの給電量を増やすことで、さらにエネルギーの自活率を高める計画だ。

 部分負荷で運転できる燃料電池3台で運用することで、台数制御も含めて、需要ロードにあった電力を高効率で供給できる可能性がある。

 山梨県企業庁は、3台の燃料電池の稼働率をいっそう高めるために、太陽光パネルの増設も検討している。余剰電力による水素の製造量を増やすことで、電力系統にまったく依存しない、完全なマイクログリッドでの運用を目指す(関連記事)。