アブダビに着陸する「ソーラーインパルス2(Si2)」
図1 ●アブダビに着陸する「ソーラーインパルス2(Si2)」
(出所:Solar Impulse)
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Si2による世界一周を達成し歓声に応えるAndre Borschberg氏(左)とBertrand Piccard氏
図2 ●Si2による世界一周を達成し歓声に応えるAndre Borschberg氏(左)とBertrand Piccard氏
(出所:Solar Impulse)
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 「ソーラーインパルス2(Solar Impulse 2: Si2)」は26日、化石燃料をまったく使わず、太陽光だけをエネルギー源とする初の世界一周飛行に成功した(図1)。

 24日午前1時28分(東ヨーロッパ標準時)にエジプトのカイロ国際空港を離陸し、26日の午前4時5分(湾岸標準時)、起点であるアラブ首長国連邦(UAE)アブダビのアル・バティーン・エグゼクティブ空港に到着、合計17回の飛行、23日間にわたった4万3041kmの旅程を完了した。

 今回の48時間37分にわたる飛行でSi2はサウジアラビアをほぼ横断する形で飛行し、飛行距離は2694km、最高高度は8534m、平均航行速度は55.4km/hだった。

 Si2はスイスのプロジェクトで、2015年3月9日から化石燃料をまったく使用せず太陽光のエネルギーだけで世界一周する飛行に挑戦していた(関連記事1)。

 当初、数カ月の飛行で年内に完了する予定だったが、中国からハワイまでの太平洋横断飛行を試みた段階で気象条件の悪化により、日本の名古屋・小牧空港への一時着陸を余儀なくされた(関連記事2)。

 その後、天候の好転を待って名古屋で1カ月弱待機した後、世界一周飛行を再開、ハワイへの5日間にわたる単独無着陸太平洋横断を成し遂げたが、今度は加熱による蓄電池の破損というハードウエアのトラブルに見舞われ、約10カ月間の期間延長を強いられた。

 蓄電池の修理を終えフライトに適した気象条件が整った今年の4月中旬に世界一周飛行を再開し、太平洋横断を完結した(関連記事3)。その後も、米国本土の横断(関連記事4)、大西洋横断(関連記事5)、地中海の横断(関連記事6)と順調に予定を消化し、今回の飛行で太陽光だけをエネルギー源とする世界一周という当初の目的を達成した。

 今回、世界一周を締めくくる飛行の操縦を担当したソーラーインパルスの共同創設者で操縦士であるベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏は先祖代々の冒険家であり、1999年には気球による無着陸世界一周に成功している(図2)。

 ピカール氏が「化石燃料を一滴も使わずに世界を一周する」という夢を抱いたのは、それからだという。

 同氏はその夢を実現するため、2004年にパートナーやスポンサーの募集を始めた。その後、最高経営責任者(CEO)兼操縦士のアンドレ・ボルシュベルグ(Andre Borschberg)氏との出会いを機に、両氏による二人三脚でソーラーインパルスのプロジェクトが本格的に動き始めた。

 ピカール氏がクリーンエネルギー技術の啓もう活動を主導する一方、ボルシュベルグ氏はSi2設計開発チームの組成、飛行ミッションの計画作成などをまとめ上げたという。

 今後、両氏はSi2プロジェクトを通じて得た知見や経験を生かし、国際クリーンテクノロジー委員会(ICCT)の創立や、太陽光ドローン開発といった革新的なプロジェクトなどの活動を進めるとみられる。