富士通と富士通研究所は、W帯(75G~110GHz)の大容量無線ネットワークを狙って、GaN系HEMTを使う送信用の高出力増幅器(パワーアンプ)を開発した(ニュースリリース)。このパワーアンプを2地点間の無線通信システムへ応用した場合、10kmの距離で毎秒10Gビット/秒(bps)の大容量通信を実現できる見込みだという。

図1●開発したW帯GaN系HEMTパワーアンプのチップ(左)とGaN系HEMTパワーアンプの性能比較(右)。富士通らの写真と図。
図1●開発したW帯GaN系HEMTパワーアンプのチップ(左)とGaN系HEMTパワーアンプの性能比較(右)。富士通らの写真と図。
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 発表によれば、モバイル通信による無線データトラフィックは、過去数年間で大きく増加しており、今後も5GやIoTデバイスの普及にともなって2020年にかけて年成長率約1.5倍で増加するという。長距離・大容量の無線通信を実現するには、広い周波数帯域を利用できるW帯などの高周波帯を用いて、送信用パワーアンプの出力を増大させることが有望だとし、今回のアンプを開発した。その際には、増大する通信システムの消費電力を低減させることを狙って、パワーアンプの効率向上に配慮したという。

 これまでのW帯における送信用パワーアンプの出力密度は富士通研が開発したゲート幅1mmあたり3.6Wが世界最高だったが、今回開発した94GHzで動作するたパワーアンプでは出力密度がゲート幅1mmあたり4.5Wへと向上した(図1)。また、漏れ電流の低減により、従来技術と比べて26%減の低消費電力化を実現した。このパワーアンプを用いることで、2地点間を無線通信システムでつなぐ場合に、10km以上かつ毎秒10Gビット/秒以上の長距離・大容量通信を実現できる見込みだという。