光触媒・電解ハイブリッドシステムによる水素製製造の原理
光触媒・電解ハイブリッドシステムによる水素製製造の原理
(出所:産総研)
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ハイブリッドシステムのプラントイメージ
ハイブリッドシステムのプラントイメージ
(出所:産総研)
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 産業技術総合研究所(AIST)は6月15日、太陽エネルギーの変換効率でトウモロコシと同レベルとなる世界最高効率の光触媒を開発したと発表した。産総研 太陽光発電研究センター 機能性材料チームの成果。

 高いエネルギー変換効率を示す光触媒として、従来、見出されていた酸化タングステン(WO3)は、吸収波長領域が狭く可視光を十分に利用できなかった。そこで、産総研では、より長い波長の光を吸収できる一方で効率が低いという課題のあった「バナジン酸ビスマス(BiVO4)」に着目し、その高性能化に取り組んだ。

 その結果、BiVO4にガリウム(Ga)を添加して調製条件を工夫すると、効率が大きく向上することを見出した。

 産総研では、プールに入れた粉末の光触媒と電解装置を組み合わせた「光触媒・電解ハイブリッドシステム」により、鉄イオンを利用して水を電気分解する低コストの水素製造プロセスを考案している(図)。このシステムを前提とした太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換(鉄3価イオンを鉄2価イオンに変換)効率を比べると、Ga-BiVO4光触媒では、従来のWO3の効率(0.38%)の1.7倍となる0.65%に達した。

 「0.65%」という変換効率は、トウモロコシが太陽エネルギーをセルロースや糖に変換する効率(約0.8%)に近いレベルになるという。

 産総研が考案しているハイブリッド方式による水素製造システムでは、光触媒の太陽光エネルギー変換効率が3%程度まで高まると、化石燃料を改質した場合の水素製造コスト(30円/Nm3以下)を実現できるという。今後、光触媒の改良を重ね、変換効率3%を目指すとしている。