東芝と米Western Digital社は、NANDフラッシュメモリーを製造する東芝・四日市工場の新・第2棟(通称N-Y2棟)の建屋全体が完成したことを受け、2016年7月15日に現地で竣工式ならびに記者会見を行った(図1、図2)。竣工式および記者会見には、東芝 代表執行役社長の綱川 智氏、同社でメモリー事業を統括する代表執行役副社長の成毛 康雄氏に加えて、Western Digital社 CEOのSteve Milligan氏も駆け付けた(図3、図4)。

図1 竣工したN-Y2棟
図1 竣工したN-Y2棟
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図2 神事の様子
図2 神事の様子
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図3 テープカットの様子
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図4 鏡開きの様子
図4 鏡開きの様子
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 今回、これだけのトップが顔を揃えたのは、両社にとって、このN-Y2棟を中心に展開する次世代NANDフラッシュメモリー事業が社運を賭ける事業だからである。このことは今後の投資計画を見れば一目瞭然だ。東芝は、ストレージ&デバイスソリューション社として、2016~2018年度の3年間で計8600億円の設備投資(発注ベース)を計画している。営業キャッシュフロー、社内資金、リースなどを活用することで賄う。一方、Western Digital社も2016~2018年度の3年間で「50億米ドルの設備投資を行う」(同社CEOのSteve Milligan氏)方針である。両社合わせて、「今後3年間で1.4兆円の投資をすることになる」(東芝の綱川氏)と力を込める。東芝にとって、「メモリー事業は利益、売上高の両面で成長の原動力となる」(同氏)。

 NANDフラッシュメモリーは、スマートフォンやSSD(solid state drive)、サーバーなどを中心に今後も市場拡大が期待されており、今後は現行の2次元フラッシュメモリーに加えて、大容量化、高性能化に向く3次元フラッシュメモリー(東芝内の通称BiCS FLASH)の需要が高まっていくと東芝などは見ている。今回、竣工したN-Y2棟は、3次元フラッシュメモリー固有の工程を行う製造棟として、東芝が2014年9月に着工した工場。建屋の一部は2015年10月に竣工し、両社で最先端生産設備の導入を進め、2016年3月から3次元フラッシュメモリーの少量生産を行っている。今後、市場動向に応じて追加投資を行い、生産体制を拡充していく方針である。

 3次元フラッシュメモリーの生産においては、四日市工場で導入している工場全体を統合した生産システムを活用し、加工条件や検査データなど、毎日16億件以上のビッグデータを解析することで、生産効率、品質を一層向上させる計画である。なお、N-Y2棟の建物構造は鉄骨2層5階建で、建屋面積は2万7600m2である。

 東芝は、N-Y2棟に続く次期新棟の計画も明らかにした。2016年度に土地を造成し、市況を見ながら2017年度に建設を開始する方針である。第5棟(Y5)と連携して、2018年度以降の生産拡大に対応させるとする。