今回発見した新光触媒を応用した再生可能エネルギーサイクル
今回発見した新光触媒を応用した再生可能エネルギーサイクル
(出所:京都大学)
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 京都大学は7月7日、アンモニア(NH3)を電子源として二酸化炭素(CO2)を光還元し、水の光還元がほぼ進行せず、一酸化炭素(CO)のみを高濃度で取り出せる光触媒群を発見したと発表した。常温・常圧条件下で水素とCOの合成ガスを容易に得られる人工光合成技術として期待される。

 CO2は温室効果ガスの中で最も排出量が多く、地球温暖化に最も影響を及ぼす気体のため、その削減や利用が求められている。しかし、CO2は非常に安定な直線型の分子のため、別の物質と反応させるのが非常に難しいことで知られる。

 今回、不均一光触媒(固体光触媒)を用いて、アンモニアを原子源にCO2の光活性化を行い、CO2から合成ガスの原料となるCOを約7500ppmの高濃度で生成することに成功した。COは、人体には有害な物質だが、同時に生活に必要な燃料・遷移・プラスチックなどの原料であり、化学産業に不可欠な化学品のひとつという。

 また、これまでCO2の光還元における原子源はH2Oか有機物だった。今回の研究では、無機物であるアンモニアを原子源に利用できる点でも意義があるとした。アンモニアは、人工的に製造できるほか、牛舎や豚舎からの排水にも含まれており、今回の成果を応用すればCO2を吹き込むことで有用な化学品に変換できる可能性がある。

 なお、今回の光触媒は、太陽光に含まれる可視光を利用できない。今後、可視光で駆動する光触媒の探索が課題という。今回の研究成果は、英国王立化学会の学術誌「Chemical Science」オンライン速報版に2017年6月19日掲載された。