国際エネルギー機関(IEA)は7月11日、2016年の世界のエネルギー投資で電力分野への投資額が、その上流となる石油、ガス、石炭の供給分野への投資額合計を初めて上回ったと発表した。IEAが刊行した最新版の調査報告書「World Energy Investment 2017(WEI2017)」で明らかにした。

 同報告書によると、スマートグリッドといった電力網の改修を含めると、クリーンエネルギー関連分野の投資額は、全エネルギー投資の43%を占め過去最高となった。

 2016年における世界のエネルギー投資の総額は、世界のGDPの2.2%となる1.7兆ドルで前年比12%減になった。2015年の同8%減に続き、2年連続の下落となる(関連記事)。再生可能エネルギーや電力網、省エネルギーへの投資額は堅調に増加したが、化石燃料への投資の大幅な減少を補いきれなかったと分析している。

 国別にみると、エネルギー投資額で世界最多だったのは中国で、石炭火力発電への投資額が25%下落したものの、再エネによる発電や電力網の改修、省エネ関連への投資が拡大した。

 米国では石油・ガスへの投資に急ブレーキがかかり、世界のエネルギー投資総額に占める割合は16%だった。インドは前年比7%増と主要なエネルギー投資市場として最も成長率が高く、同国政府が主導する電力施設近代化や増強が寄与したとしている。

 IEAのファティ・ビロル事務局長は、「エネルギー安全保障を維持しつつ環境面での目標を達成するために、最適な投資の重要性がかつてないほど増している」と述べている。

 世界の電力分野への投資額は、ほぼ横ばいで7180億ドルだった。電力網への投資額の増加が、石炭火力発電所の減少でほぼ相殺された結果とみている。

 再エネ設備への支出も5年前と比較して3%減だったが、太陽光や風力のコスト下落や発電技術の向上が進んだため、電力の供給は35%増加したとしている。

 省エネへの投資継続や石炭から天然ガスへの転換、低炭素型の発電施設の累積効果などによって、温室効果ガスの排出は3年連続で鈍化したが、クリーンな電力への投資が電力需要の増加に追い付いていないと指摘している。これは、風力や太陽光の新設容量の増加が、今後数年にわたる原子力や水力への投資の決定が遅れている分とほぼ相殺されてしまったためという。

 同レポートは、電力需要の伸びをカバーするためにも、低炭素型の発電設備への投資をより加速させる必要があると結論づけている。