中部大学工学部情報工学科講師の山下隆義氏は、ディープラーニング(深層学習)を用いて画像認識の性能を向上させる技術を開発した。複数の対象の識別を同時に行い、それぞれの結果を関連させながら学習させることで画像認識の精度を高めるものだ。この技術を車載カメラに応用すれば、歩行者の検知だけでなく、歩行者が向いている方向やクルマからの距離、傘や荷物の有無といった複数の情報を基に危険性を判定し、歩行者の状態に合わせた車両の制御が可能になる(図1、2)。従来の技術より危険予測に優れるADAS(先進運転支援システム)の開発に適用できそうだ。2016年6月19~22日にスウェーデンで開催された自動車学会「Intelligent Vehicles Symposium」で発表した。

図1 歩行者の検知と、クルマからの距離を推定した結果。10mの距離で推定誤差を5%程度にした。(山下氏の発表スライド)
図1 歩行者の検知と、クルマからの距離を推定した結果。10mの距離で推定誤差を5%程度にした。(山下氏の発表スライド)
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図2 歩行者の向いている方向や、性別、傘や荷物の有無といった属性情報を推定した結果。(山下氏の発表スライド)
図2 歩行者の向いている方向や、性別、傘や荷物の有無といった属性情報を推定した結果。(山下氏の発表スライド)
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 クルマの予防安全において、歩行者との衝突回避は依然として難しい課題である。車両に比べて歩行者はセンサーで検知しづらい上に、飛び出しなどの危険行為を予測する必要があるためだ。人がクルマを制御する場合は、「歩行者がクルマの接近に気付いているか」「飛び出す可能性があるか」といった危険性を、歩行者の動作や状態など複数の情報を基に人が先読みして対応できる。一方、ADASでクルマを自動制御する場合、複数の情報を統合して処理しようとすると計算量が増えて難しくなる。