「消化器がん全般に使える」

画像解析に適した深層学習を適用
画像解析に適した深層学習を適用
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システムの構成。病変の検知と結果表示は30フレーム/秒の速度で実行できる
システムの構成。病変の検知と結果表示は30フレーム/秒の速度で実行できる
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 今回のシステムは、AIを用いた病理画像解析や顔認証に関するNECのノウハウを生かし、同社と国がんが共同開発したもの。画像解析に適した深層学習(ディープラーニング)や高速処理アルゴリズムを基に、画像処理プロセッサー(GPU)を搭載した1台のパソコンで動作するプロトタイプを実現した。学習データには、国がん中央病院 内視鏡科で過去に診断した約5000病変の所見つき内視鏡画像、および病変が映っていない画像約13万5000枚を利用している。

 開発したシステムを使い、学習データには含まれない病変画像705枚、非病変画像4135枚を解析。その結果、数mm大の微小な病変も精度良く検出でき、大腸がんと前がん病変を感度98%、特異度99%(正診率98.8%)で検出できた。この性能は「人間(の医師)と同等」(国がんの山田氏)。しかも検知と結果表示を30フレーム/秒の速度で実行できることから、実際の内視鏡検査ではAIによる検出結果をリアルタイムにフィードバックできるという。

 今回は隆起型病変を対象とした検証であることから、今後はより検出が難しい平坦・陥凹型病変も検出できるようにする。国がん中央病院が持つ1600例以上の平坦・陥凹型病変の画像データを学習させることでこれを実現するという。さらに、過去の画像データを対象とする解析ではなく、実際の内視鏡検査で今回のシステムが医師をどのようにサポートできるかを検証していく。開発チームは「全国津々浦々で使うことができ、内視鏡検査の均てん化につながるシステムを実現したい。大腸がんだけではなく、胃がんなどを含む消化器がん全般に今回のアルゴリズムを適用できると見ている」(山田氏)と話している。