新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年7月5~7日に開催された太陽光発電の展示会「PVJapan 2017」に、NEDOが開発を支援して実現した太陽電池の研究開発品4点を出展した。いずれも世界最高水準の性能を備えている。
4点のうち1点は、カネカが2016年11月に発表した「ヘテロ接合バックコンタクト型太陽電池」。面積は180cm2。セル変換効率は26.6%で、Si系太陽電池としては現在も世界最高の値である。この値にはNEDOの担当者も「驚いた」という。
2点めは、パナソニックが試作したペロブスカイト太陽電池モジュール。寸法は20cm角で変換効率は12.6%である。ペロブスカイト太陽電池は、5mm角ほどの小セルでは22%台の変換効率も報告されているが、これまでは性能バラつきが大きく、大きなセルやモジュールで高い変換効率を実現するのは容易ではない。変換効率12.6%は20cm角のモジュールとしは世界最高水準である。
この太陽電池は、モジュール全体がスピンコート法という回転する基板に溶液を塗布して成膜する手法で作製されており、周辺部分には塗りムラも目立つ。このため、「量産時には、スピンコート法でない製法の開発が必要になる」(NEDO)という。
3点めは、ソーラーフロンティアが2017年1月に発表した「CIS系薄膜太陽電池」。30cm角のサブモジュールで変換効率19.2%という値は、この寸法のCIGS系太陽電池としてだけでなく、他のタイプの薄膜太陽電池サブモジュールを含めても世界最高水準だという。
4点めは、シャープが2016年5月に発表した「化合物3接合太陽電池」。III-V族化合物を用いた太陽電池モジュールで、寸法は約31cm角で変換効率は31.17%。3接合かつ非集光(または集光倍率1倍)での変換効率としては世界最高水準である。ただし、4~5接合品では非集光型でもさらに変換効率が高い太陽電池はある。
シャープのこの開発品のもう1つの特徴は、セル作製時に用いた基板を剥離していること。薄型にできるだけでなく、将来的には基板の再利用を見込めるため、現状ではSi系の数十~数百倍であるIII-V族化合物太陽電池の単位発電出力当たりの製造コストを大幅に引き下げられる可能性がある。ただし、現時点では基板の再利用技術はまだ開発中だという。