重粒子線がん治療施設を設立した機関の代表者が集う「全国重粒子線治療施設設立者協議会」は2017年7月6日、設立記念シンポジウムの開催に合わせて東京都内で記者会見を開催した。会を構成する5機関の代表者が登壇し、協議会設立の趣旨や各施設の治療実績を紹介した。

記者会見の様子
記者会見の様子
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 同協議会は「重粒子線治療の普及・発展のために、医療現場だけでは難しい課題解決に貢献する」(同協議会会長で量子科学技術研究開発機構 理事長の平野俊夫氏)ことを目的に、2016年12月に設立された。構成員は日本に重粒子線治療施設を持つ5機関、すなわち量子科学技術研究開発機構、兵庫県、群馬大学、佐賀国際重粒子がん治療財団、神奈川県立病院機構である。

 日本は、重粒子線治療の実績で世界をリードしている(関連記事1)。現5施設に加えて2施設(大阪府と山形大学)の建設計画が進行中であるとともに、世界の「多くの医療機関が日本製の装置購入を検討している」(平野氏)。重粒子線治療に関する多施設共同臨床研究組織「J-CROS」では、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の定める統一プロトコールに基づく全国全症例のデータベース登録も始まった。

 各機関は、現行の重粒子線治療の“次”を見据えた取り組みに着手している。兵庫県立粒子線医療センターでは、肝胆膵領域の進行がんに対する重粒子線治療に、消化器外科医などと共同で取り組んでいる。九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀国際重粒子がん治療財団)では、スキャニング照射に対応する治療を準備中。群馬大学 重粒子線医学研究センターや神奈川県立がんセンター(神奈川県立病院機構)は、免疫療法との併用療法に関する研究を進める計画だ。