「半導体部品のデータシートからΔTj(Tj:ジャンクション温度、接合部温度)を算出する手間を減らしたい」――デンソーでECU(electronic control unit)の熱解析に携わる篠田卓也氏(技術開発センター 基盤ハードウェア開発部 開発1課 第1ハードPF開発室)は、半導体メーカーが提供するデータシートから熱過渡解析に用いる素子モデルを作る方法について講演した。

 同講演は、「Mentor Forum 2015 - T3Sterユーザ会」(2017年6月29日、東京)で行われたもの。篠田氏は、これまでに熱過渡解析の重要性を訴えきた。その中で、誰でも作成できて精度良く短時間で計算できるモデルとして、非破壊熱抵抗・熱容量測定器「T3Ster」の実測値に基づくRCモデル「DNRC(Detail Network R C)モデル」を提案するなどしていた(炎天下で車載パワー半導体は大丈夫か、デンソーが熱過渡解析モデル)。

 今回、篠田氏はDNRCモデルのうち、T3Sterの実測により得られる構造関数から導き出した素子内部に相当する部分を、過渡熱抵抗グラフから得られる熱抵抗(R)・熱容量(C)に置き換えた「DSRC(Data Sheet R C)モデル」を提案した。過渡熱抵抗グラフをモデル化するのには、T3SterのオプションソフトウェアT3Ster-Masterを利用する。DNRCモデルは実測により実製品組み立て状態で試作品の検証などに用いることを想定するのに対して、DSRCは実製品がない状態など設計初期で検討のために用いることを想定している。

これまで篠田氏が提案してきたDNRCモデルと今回提案したDSRCモデルは、いずれも流通しやすく精度が高いことを特徴とするという。DELPHIモデルを応用した簡易過渡モデルは、詳細モデルが元になっているため、半導体メーカーでなければ作成できないという。(図:デンソー)
これまで篠田氏が提案してきたDNRCモデルと今回提案したDSRCモデルは、いずれも流通しやすく精度が高いことを特徴とするという。DELPHIモデルを応用した簡易過渡モデルは、詳細モデルが元になっているため、半導体メーカーでなければ作成できないという。(図:デンソー)
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DSRCモデルでは、過渡熱抵抗を利用して素子モデルを作る。(図:デンソー)
DSRCモデルでは、過渡熱抵抗を利用して素子モデルを作る。(図:デンソー)
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