欧州は三つの課題を同時並行的に取り組む

 EU(欧州連合)では現在、英国の離脱に大きな関心が集まっている。この起点となっているEUの政治的な統合は、1990年に始まり、これと並行して、エネルギーのインフラを革新した。加盟国間で相互に電力を融通できる電力網に変え始めてから、20年間以上かけている。この改革を、再エネの大量導入と並行して進めてきた。

 日本でも、電力システム改革がはじまり、今後、地域を越えて、効果的に再エネ電源を活用できる段階に入る。ただし、議論が始まってからまだ数年に過ぎず、長い時間をかけて徐々に変わっていくとみている。

 これらの課題は、「新しいエネルギー」故の課題とする。すべて克服できたときに、基幹的な電源になっていくとしている。

 現在の日本の太陽光発電は、FITの効果を生かし、最大限のペースで導入している時期にある。FITの役割は、導入促進期におけるドライバー(牽引役)で、電源として社会に根付く土壌を作るという、あくまで将来に向けた投資を引き出すことにある。だから、FITは、永続する制度ではないとしている。

 コストが下がり、電力網の受け入れ状況が整い、国民の意識とともに歩めるようになれば、太陽光発電は、自立的に導入される電源となる。FITは、そうした社会が、できるだけ早く到来するために、コストを低減する役割を担っている。

 松山課長は、今回の欧州滞在で、欧州がこうした社会に近づいていると感じたという。蓄電池を併設した電源としても、グリッドパリティ(発電コストが電力料金と同等以下)を実現するまで、もう一息まで近づいている実感を得たとしている。

 日本において、長期にわたって信頼される、基幹的な電源となるには、FITの施行期間中に、三つの課題を克服していく必要がある。FITの買い取り期間が終わった後も、発電を続ける発電所を、どれだけ生み出せるか。このためには、さまざまな改善や競争が求められている。

 例えば、長期的な視点で見るようになり、初期投資に大きく影響する設備に関心が偏らず、長期的に安定し、収益性が高い事業を実現するために、適切な運用や保守に関心が高まるようになってほしいと希望する。そのような状況に変われば、発電に関連するデータの取得や分析、それを生かしたサービスが活性化し、ビジネスの構図も変わると予想している。

 大量導入期から、基幹電源として定常的な状態に、どのように導いていくかが、制度としての課題となるとする。

 こうした制度の手直しの一つが、今回のFITの改正だとしている。設備の認定から事業計画の認定に変えることで、未稼働案件の発生を減らすことや、より競争的な市場への移行を目指した、効率的なコストによる導入を促す買取価格の決定方式、適切な事業の実施を確保する仕組みなどをポイントに挙げた。

 中でも、事業計画の認定だけでなく、運用中の保守などまでチェックする仕組みは、世界でも先進的なものという。事業の内容が基準に適合すること、事業が円滑かつ確実に実施されると見込まれること、設備が基準に適合することを認定の基準としており、点検や保守などの順守を求め、違反した場合に改善命令や認定取消を可能とした。