経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の松山泰浩課長
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の松山泰浩課長
(撮影:日経BP)
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 経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の松山泰浩課長は6月29日、太陽光発電関連の展示会・講演会によるイベント「PVJapan 2016」(6月29日~7月1日、パシフィコ横浜で開催)において、「FIT制度改正と太陽光発電の更なる導入拡大について ~長期安定的な太陽光発電事業の確立に向けて」と題して講演した。

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の改正が決まり、2017年4月から新制度が施行される。この改正の背景や、新制度の特徴などを解説するとともに、今後の日本の太陽光発電の課題を挙げた(関連インタビュー1同インタビュー2)。

 松山課長は、先週1週間、世界最大級の太陽光発電関連イベント「Intersolar Europe」(6月22日~24日、ドイツ・ミュンヘンで開催)に合わせ、欧州に滞在していた。欧州における太陽光発電が、既存の電源と同じように、長期間、安定的に一定以上の規模のエネルギーを供給する基幹的な電源に、より近づいていることを実感した日々となったという。

 松山課長は、欧州における再生可能エネルギーの現状を、以下のように捉えている。

 長期的なエネルギーへの取り組みとして、石油ショック(1973年)を機に、化石燃料に頼らない「新エネルギー」を模索する動きが世界各国で活発になり、現在も模索が続いている。それぞれの国が持つ資源や、置かれた状況などによって、重視する「新エネルギー」の種類は異なる。

 欧州は、再エネの導入に必要な要素を、30年以上の長期にわたって強化してきた。その結果として、今回の滞在で、未来のエネルギーではなく、現実的なエネルギーに進化していることを、改めて感じたという。

 既存の電源に対して、コスト競争力があり、FITなしでもエネルギーとして成り立つような、暮らしの一部に組み込まれている電源に変わってきていることを実感できたとしている。

 「(FITを活用した)狂乱的な導入期から、巡航速度に落ち着き、いよいよ自立的な基幹電源の地位に辿り着きそうな状況になってきた」と見ている。

 松山課長によると、再エネが基幹的な電源として根付くために、三つの課題がある。コスト、インフラ、国民の意識である。欧州では、それぞれの課題に長期間、同時並行的に取り組んできた成果が出てきているという。

 インフラとは、電力網を指す。国民の意識とは、地域との関係を指す。コストの課題は、FITによって解消できても、再エネを多く受け入れられるだけの電力網と、国民の意識が追い付いていなければ、導入後、根付くことは難しい。