米VMware社の日本法人であるヴイエムウェアは2017年6月27日、東京都内で「Virtual SAN(以下、vSAN)」の戦略説明会を開催した。前半はVMware社のStorage and Availability担当Senior Vice President and General ManagerのYanbing Li氏がストレージ市場の最新動向、vSANのポジショニング、VMware社のビジョンについて、後半はヴイエムウェアのソリューションビジネス本部長である小林泰子氏がvSANの販売戦略を解説した。

VMware社のStorage and Availability担当Senior Vice President and General ManagerのYanbing Li氏
VMware社のStorage and Availability担当Senior Vice President and General ManagerのYanbing Li氏
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 vSANは複数のサーバーが搭載する「Direct attached storage 」(DAS)を仮想化して、それらをSAN(Storage Area Network)経由でアクセスする外部記憶装置のように見せるためのソフトウエア。VMware社のハイパーバイザー型仮想化ソフト「VMware vSphere ESXi」と連携して、個々の仮想マシンにプロセッサー処理性能やストレージ容量を必要に応じて割り当てることができ、パブリッククラウドのIaaS(Infrastracture as a Service)と同等の環境を企業内のプライベート環境(オンプレミス)に構築できる。

 オンプレミスにIaaS環境を構築する基盤は「HCI」(Hyper Converged Infrastructure)と呼ばれ、米Nutanix社や米SimpliVity社(米Hewlett Packard Enterprise社が2017年1月に買収)が同分野の代表的ベンダーとして知られている。Yanbing Li氏が紹介したリサーチコミュニティー「Wikibon」の予測では、ストレージ関連の市場規模は2026年に500億米ドルを超えるが、その時点での需要はHCIのストレージとクラウド経由の「ハイパースケールストレージ」が大半を占め、従来型のストレージ製品は一部の特殊用途を除いてほぼ消滅状態になるという。

 vSANはVMware社のプライベートイベント「VMworld 2013」で2013年に発表され、2014年に発売された。当初は「ストレージ仮想化ソフト」「仮想ストレージ」などと呼ばれていたが、VMware社は現在、マーケットトレンドに乗るかたちで、vSANをHCIを構築するための「HCIソフトウエア」と位置付けている。vSANの導入企業数は2016年第4四半期に8000社に達しており、「HCIソリューションとして世界で最も利用されている」(Yanbing Li氏)という。

 vSANを構成するサーバーは最低1台のSSDを搭載する必要があり、このSSDをバッファー領域とすることで、I/O(入出力)性能を高めている。vSANの機能モジュールはvSphere ESXiのカーネルにあらかじめ組み込まれており、vSANのライセンスを購入すると利用できるようになる。このため、他のHCI製品に比べて仮想マシンとストレージとの間のやり取りで発生するオーバーヘッドが少なく、動作も安定しているという。「vSANが登場した直後、ユーザーはリモートオフィス、VDI(仮想デスクトップ基盤)などの非クリティカルな用途にまず利用した。だが、十分な性能が得られることが分かったため、現在ではクリティカルなビジネスアプリケーションにもvSANを利用している。2016年の時点でvSANの全ワークロードに占めるビジネスアプリケーションの比率は64%に達しており、VDIの22%などを抑えてナンバーワンになっている」(Yanbing Li氏)。