鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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 2016年6月24日、英国が欧州連合(EU)を離脱する国民投票を成立させた。「Britsh(英国)」と「Exit(離脱)」、すなわち「Brexit」である。関係者によれば、この国民投票は単なる人気投票ではなく法的拘束力を有するものであり、この結果、英国は早ければ2018年にもEUから脱退する見通しだという。

 もっとも、英国のEU脱退による影響がどのようなものになるかは不確定である。というのも、EU脱退という方向性は決まったものの、その後、EUの一部の条約部分にとどまることができるのか、現在加盟している欧州経済領域(EEA)を維持するのか、それに加えて欧州自由貿易連合(EFTA)に加入するのか、英国の採り得る選択肢は多様であり、その選択肢が影響の程度を左右するからである。

 そういう意味では、知財の世界でも、英国がEU脱退を実行する2018年まではその影響は限定的だ。英国のEU離脱の進行と同国が採る選択肢に応じるべく準備期間が与えられているとの論調が多いようである。

 ご存じの方も多いと思うが、欧州への特許出願は欧州特許庁(EPO)に対して一括して行うことができ、英国特許権もこのルートで取得できる。そして、EPOおよびこの根拠となる欧州特許条約(EPC)はEUの一部ではないため、このルートは英国のEU脱退後も引き続き維持されるという論調もある。しかし、このルートを維持するかどうかも、英国の採り得る選択肢の一部であろう。