がんなどの疾患を血液から診断する「リキッドバイオプシー」で、日立化成と米MD Anderson Cancer Centerが手を組んだ。2016年6月27日、血中循環がん細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)を捕捉する高精細フィルター、および血液自動処理装置と試薬からなるシステムの開発・評価について両者は、4年間の戦略的提携を結んだ。日立化成はCTC由来のバイオマーカーを診断に適用することを目指し、2021年までにがん診断市場に参入する考え。

 今回の提携では、日立化成が資金とシステムを提供。MD Andersonは2016年5月に始めた大規模臨床試験において、このシステムを活用するための専門知識を提供し、CTCの遺伝子解析も実施する。これを通じ、日立化成のシステムで捕捉したCTCががんの遺伝子解析において臨床的に有効かどうかを確認する。この結果、転移性がんの早期スクリーニングや患者に合わせた抗がん剤の選定、抗がん剤の開発など、CTCの広範囲な臨床応用が進むことが期待されるとしている。

 CTCは既に、転移性乳がんや前立腺がん、大腸がんにおいて、予後予測マーカーとしての価値が認められているという。今回の臨床試験は400症例規模で、転移性乳がんと非小細胞肺がんに対して実施する。

 日立化成はこれまで、微細加工技術を用いた高精細フィルターを利用し、患者の血液からCTCを迅速に捕捉する技術を開発してきた。高精細フィルターと血液自動処理装置および試薬からなるシステムを使い、健常人の血液にがん細胞を添加した摸擬実験において、血液中のCTCを90%以上捕捉できることを確認済みという。

 同社はMD Andersonとは2014年から、CTCに関する共同研究を進めてきた。日立化成の技術でCTCを捕捉できること、およびバイオマーカー候補となるがん関連遺伝子を検出できることをMD Andersonが明らかにした成果を受けて、今回は大規模臨床試験に発展させる。