東京工業大学は2016年4月、大掛かりな組織改革を実行した。その目玉の1つとして新設した「科学技術創成研究院」には、傘下に10の研究ユニットを設けた。「ビッグデータ数理科学」「ハイブリッドマテリアル」などとともにその1つに選ばれたのが「スマート創薬」だ。

 東京工業大学が2016年6月24日に開催した「デジタルヘルス・シンポジウム ~『医薬×ICT』のフロンティア~」では、同大学 科学技術創成研究院 スマート創薬研究ユニット ユニット長・准教授の関嶋政和氏が登壇。同ユニットの取り組みを紹介した。

関嶋氏の講演の様子
関嶋氏の講演の様子
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 スマート創薬は「情報科学技術による予測(IT創薬)と生化学実験を相互補完的に用いることで、効率的な創薬を実現する」(関嶋氏)ことを目指すもの。背景には、上市薬1案件当たりに3000億円/10年といった費用と時間が掛かるようになり、製薬企業に閉じた形での創薬が限界を迎えつつあることがある。スマート創薬では「大学とベンチャー企業が中心となり、創薬技術のオープン化・共通化を主導していく」(同氏)。

 オープンイノベーション型の創薬モデルの構築と運用に向けて、同ユニットは大きく3つの取り組みを計画している。第1に、東工大と企業数社でオープンな創薬環境を構築しモデル運用する。第2に、オープン参加型の「創薬コンテスト」を実施する。第3に、社会人向けに「IT創薬人材養成コース」を提供する。

 これらを通じ、「世界を牽引するアカデミア創薬基盤技術」の確立を目指すという。ここには、スーパーコンピューター「TSUBAME」上での大規模GPU活用など、東工大が強みを持つ技術も投入する。