「2016 Symposia on VLSI Technology」(2016年6月13日~17日に米ホノルルで開催)の「Plenary Session」に続くSession T2「Technology Highlighted Session」では、10nm世代のデバイス技術の発表が相次いだ。今回のSymposiumでは、採択された86件の論文の中で注目論文として12件の論文が選定され、このうち4件がSession T2のハイライトセッションで発表された。

 Si、SiGe、InGaAsと異なるチャネル材料を用いたFinFET技術に関する論文、およびSTT-MRAMに関する論文である。議論も白熱し、セッション終了後に多くの聴衆が発表者を取り囲む光景も見られるなど、活気あるセッションの雰囲気を味わった。

 近年、シリコン集積回路の微細化限界が顕在化し、Mooreの法則の終焉以降のデバイス技術の方向性が議論されている。今回のハイライトセッションでは、この様な状況にもかかわらず10nm世代のデバイス技術の発表が相次いだのが特徴的であり、微細化による高性能化が現在なおも進行中という、その健在ぶりを示す論文が披露された。

4種類のVthを実現

 最初に、韓国Samsung Electronics社が10nm世代のSi FinFET技術を発表した(講演番号 2.1)。主な特徴は、ゲートスタックの改善による4種類のVthの実現、フィン形成やコンタクト等各種のプロセス改善である。

 随所で微細化を達成し、14nm世代に比べてスピードで27%高速化、同一スピードでは40%の電力削減を実現するとともに、SRAMセルサイズ0.04μm2を実現した。このところ韓国からの発表が一時ほど多くは見られなくなっているが、Samsungの高い集積化技術の健在ぶりを示す発表といえる。

 続いて、米IBM社と米GLOBALFOUNDRIES社が、SiGeをチャネル材料にした10nmノード技術を発表した(講演番号2.2)。Samsungとの大きな違いは、pMOSにSiGeチャネルを用いることであり、nMOSは通常のシリコンを用いている。

 pMOSにGe濃度20%のSiGeを用いることで、35%の移動度向上と17%の実効電流向上を達成し、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)が大幅に改善することも示している。特性向上には、酸素濃度の低減による欠陥低減が鍵を握るという。4種類のVthも提供するなど、Samsungの10nmプラットフォームと好対照をなす論文といえる。