東京工業大学と物質・材料研究機構(NIMS)は、希少元素を含まない窒化銅(Cu3N)を使って、p型とn型の両方で高い伝導キャリア移動度を示す半導体を開発したと発表した。

 新 NH3/O2ガスを使った銅の直接窒化法により窒化銅を形成した。また、第一原理計算に基づく理論計算から、窒化銅の格子の空隙にFが入るとp型半導体、Cuが入るとn型半導体になると予測。電子顕微鏡によるp型Cu3N:Fの原子マッピング像から、理論予測通り格子空隙にF原子が存在することを確認した。

 同研究により、大面積・低コスト化に適した合成法でp型とn型の窒化銅を実現した。同一材料のp型とn型半導体を使った、希少元素を含まない薄膜太陽電池への応用が期待される。

 今回の研究成果は、独科学誌「Advanced Materials」オンライン版に速報として6月19日(現地時間)公開された。

(a)銅の直接窒化法の原理、(b)第一原理計算に基づく予測。Cu<sub>3</sub>Nの格子の空隙にFが入るとp型半導体、Cuが入るとn型半導体になる。(c)Cu<sub>3</sub>N:Fの原子マッピング。F原子は格子空隙に存在する。(d)直接窒化法で作製したn型とp型の移動度とキャリア濃度
(a)銅の直接窒化法の原理、(b)第一原理計算に基づく予測。Cu3Nの格子の空隙にFが入るとp型半導体、Cuが入るとn型半導体になる。(c)Cu3N:Fの原子マッピング。F原子は格子空隙に存在する。(d)直接窒化法で作製したn型とp型の移動度とキャリア濃度
(出所:東京工業大学、NIMS)
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