北米の定置型蓄電池関連イベントであるEnergy Storage North America(ESNA)は6月14日、革新的な蓄電池プロジェクトを表彰する「イノベーション・アワード(技術革新賞)」の候補となるプロジェクト8件を発表した(表)。

 プロジェクト名称プロジェクト主体出力容量
集中型
カテゴリー
SDG&E Expedited Energy Storage Projectサンディエゴ・ガス&エレクトリック
(SDG&E)
30MW120MWh
Aliso Canyon: Pomona Energy StorageAltaGas20MW80MWh
SCE Hybrid Enhanced Gas Turbine (EGT)サザン・カリフォルニア・エディソン (SCE)10MW4.3MWh
IID’s Battery Energy Storage SystemImperial Irrigation District (IID)30MW20MWh
分散型
カテゴリー
Axiom Energy Refrigeration Battery PilotAxiom Energy
Marcus Garvey Village MicrogridDemand Energy 300kW1.2MWh
SMLD Energy Storage ProjectSterling Municipal Light Dept.2MW3.9MWh
Pena Station NEXT Solar+Storage MicrogridPanasonic, Xcel Energy、デンバー国際空港など1MW2MWh
「Energy Storage North America 2017」の「イノベーション・アワード」にノミネートされたエネルギー貯蔵プロジェクトの8件
(公開情報を基に日経BP総研 クリーンテック研究所が作成)

 同アワードは、クリーンでレジリエント(強靭)かつ信頼性の高い電力網への移行を可能とすることにより定置型蓄電池のエコシステムの発展に貢献している革新的なプロジェクトを表彰するもので毎年開催している。一般の投票により、最も優れたプロジェクトを選出するという。

 2017年のアワードについては、8月8~10日に米カリフォルニア州サンディエゴで開催される「ESNA2017」のカンファレンスおよび展示会の授賞式で、勝者を発表し栄誉をたたえる。

 アワード候補となっている8件のプロジェクトは、4件の集中型エネルギー貯蔵と4件の分散型エネルギー貯蔵という2つのカテゴリーに分類できる。集中型は、主に電力事業者などが系統網内に建設した大規模なプロジェクト、分散型は商業用、産業用、家庭用などの需要家の施設内に建設した比較的小規模なプロジェクトが対象である。

 集中型の4件は、すべてカリフォルニア州のプロジェクトとなっている。この背景には、同州の公益事業委員会(CPUC)がサンディエゴ・ガス&エレクトリック(SDG&E)やサザン・カリフォルニア・エディソン(SCE)といった電力事業者に対して定置型蓄電池の設置を義務付けていることがある(関連記事)。

 技術の面では、多くのプロジェクトがLiイオン電池を採用している。一方で、Axiom Energy社のように、Liイオン電池以外のユニークな事例もみられる。

 Axiom社の「Refrigeration Battery」は、スーパーマーケットなどの需要家を対象として夜間のオフピーク電力で冷媒を冷却・冷凍し、昼間のピーク需要時にその冷媒で冷蔵することでピークシフトを実現して電力コストを削減するソリューションである。

 また、分散型のマイクログリッド関連では、通常プロジェクト主体が単一の企業や学校、軍の基地などであることが一般的だが、分散電源などのマイクログリッド資産を複数の企業や団体が共有する「Pena Station NEXT Solar+Storage Microgrid」プロジェクトが候補の1件となっている。同プロジェクトにはパナソニック・グループの米国法人であるPanasonic Enterprise Solutions社が参画している。

 具体的には、駐車場のカーポートに建設された1.6MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)はデンバー国際空港、パナソニック社の社屋の屋上に設置された259kWの太陽光発電システムは、長期リース契約に基づきXcel Energy社がそれぞれ所有・運用している。Panasonic Enterprise Solutions社は、システムのO&M(運用・保守)を担当しているという。