ノルウェーの第三者調査機関であるDNV GL社は6月1日、太陽光パネルの信頼性調査結果をまとめた報告書「PVモジュール信頼性スコアカード」の2017年版を公開した。

 同調査は、太陽光パネルの長期にわたる信頼性データが一般に入手可能な形でほとんど存在しないという課題に応えるもの。2014年に初回、2016年に2回目を実施しており、今回が3回目の調査となる(関連記事)。

 近年、太陽光パネルは価格が大幅に下落しており、太陽光発電事業の成長を加速させる一因となっているが、「パネルの品質と引き換えのコスト下落では」という懸念も根強い。金融機関は20~25年間の収益予測に基づいて投融資を判断するため、パネルの長期的な性能や品質を把握することが重要としている。

 今回の調査では、項目により33から49の太陽光パネルのモデルで評価した。この中には、世界の主要な太陽光パネルメーカーの70%以上が含まれるという。調査対象となる太陽光パネルは、すべて一般に入手可能な市販品であり、必要な安全基準に準拠するもの。

 DNV GL社は、長期にわたる劣化や信頼性に影響を与える主要な要因について加速試験を行った。具体的には、過去2回と同様に、温度サイクル、動的機械加重、高温高湿、結露凍結、PID(Potential Induced Degradation)の5つである(表1)。

 温度サイクル動的機械荷重結露凍結高温高湿PID (-1kV)
試験対象モデル数4049334247
試験対象BOM数4961455050
最高位の結果 [%]測定可能な劣化なし測定可能な劣化なし-0.21%測定可能な劣化なし測定可能な劣化なし
最低位の結果 [%]完全な故障-11.0%-7.6%-5.5%-92.2%
中央値 [%]-1.9%-1.2%-2.3%-0.9%-0.4%

表1● DNV GLによる太陽光パネル信頼性調査結果の要旨
(出所: 「PVモジュール信頼性スコアカード」2017年版を基に日経BP総研 クリーンテック研究所が作成)

 今回の調査で分かったことは、まず、多くの太陽光パネルが過酷な環境に暴露する加速試験の後でも性能を維持していることという。一方、試験結果が下位25%の製品は、太陽光発電所の収益性にリスクとなるレベルの劣化を示したとしている。

 パネルに特有の部品管理(BOM)や製造工場、メーカーも、信頼性に大きな影響を与えているという。同じ種類のパネルでも、BOMや製造工場によって性能が大幅に異なることも多いとする。

 一方、メーカーの規模と信頼性の間には、相関が見られないという。同じメーカーの製品でも、加速試験の結果が大きく乖離する場合もあり得るとしている。

 信頼性評価を受けるため「DNV GL製品認定プログラム」に参加するメーカーの数は、着実に増加している。今回は、参加メーカーの数が昨年より69%も急増したという。

 DNV GL社は各試験で良好な結果となったパネルのメーカー22社を「トップパフォーマー」として挙げている(表2)。参加メーカー数の急増を反映し、トップパフォーマーの数も増加する結果となっている。

 メーカー/ブランド名
1Astronergy中国
2BYD 中国
3Flextronics シンガポール
4GCL 中国
5Hanwha Q CELLS 韓国
6Hyundai 韓国
7Jinko Solar中国
8京セラ日本
9LONGi 中国
10NSP 台湾
11REC シンガポール
12S-Energy 韓国
13Seraphim中国
14Silfab カナダ
15Solaria 米国
16SolarWorld ドイツ
17SunPower米国
18SunSpark米国
19Talesun中国
20Trina Solar中国
21Vikramインド
22Yingli中国

表2●太陽光パネル信頼性調査結果でDNV GLが「トップパフォーマー」として挙げたメーカー
(出所: 「PVモジュール信頼性スコアカード」2017年版を基に日経BP総研 クリーンテック研究所が作成。アルファベット順に配列)

 過去2回に続いて今回も全項目でトップの信頼性を示している京セラに加え、今回は米SunPower、独SolarWorldや中国トリナ・ソーラーがトップパフォーマーの仲間入りを果たした。一方、前回トップパフォーマーの一社だった中国Phono Solarは、今回のリストには挙がっていない。