保存すべきデータが爆発的に増える時代に備えて、HDDの容量が順調に拡大している。2017年前半には米Western Digital(WD)社や米Seagate Technology社が容量12Tバイトの3.5インチ型HDDの量産開始を発表(WD社の関連記事Seagate社の発表資料)。今後も装置当たりの容量は1年に約2Tバイトずつ増え、2020年ごろには20Tバイトに達する可能性がある(詳しくは日経エレクトロニクス7月号の「HDDは死なず、20T超えで記憶階層下支え」参照)。

 この時代に向けて虎視眈々と技術を蓄積しているのが、HDD向けガラス基板を独占的に供給するHOYAだ。現在、ガラス基板の主な用途はノートパソコンなどに使われる2.5インチ型HDD。NANDフラッシュメモリーを内蔵するSSDへの置き換えが進み、市場は縮小しつつある。それにも関わらず、同社はいずれガラス基板の需要は成長に転じ、現在の何倍もの事業に育つと期待する。現在はアルミ基板を使う3.5インチ型HDDが、大容量化が進むに連れて、一斉にガラス基板の採用を始める可能性があるからだ(図1)。

図1 HOYAのガラス基板を内蔵するモックアップ
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図1 HOYAのガラス基板を内蔵するモックアップ
約1インチ厚の3.5インチ型HDDの筐体内に、左は0.635mm厚のガラス基板を9枚、右は0.5mm厚のガラス基板を10枚入れた場合を想定している。

 ガラス基板の強みの1つは、アルミ基板と比べて剛性が高く、より薄型にできること。その分、同じ寸法の筐体内により多くのディスクを内蔵して、大容量にすることができる。HOYAは既に厚さ0.5mmや0.381mmの基板を試作済みで、前者は約1インチ厚の3.5インチ型HDDに10枚、後者は12枚内蔵できるという(図2)。現行製品では、WD社の12Tバイト品が0.635mm厚のディスクを8枚内蔵している。それと同じ記録密度のままでも、ディスクを10枚使えば15Tバイト、12枚使えば18Tバイトを実現できることになる注1)

注1)ディスクを12枚使った場合に、いわゆる瓦磁気記録(SMR:Shingled Magnetic Recording)方式を利用すると、容量を20Tバイトに引き上げることも可能だ。SMRは、データを記録するトラックを隣接トラックに一部重ねて書き込むことで実効的なトラック幅を狭める技術。データの書き込みに制約があるため、現状では通常の製品とは別ラインとして用意されている。
図2 12枚内蔵も可能
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図2 12枚内蔵も可能
上は0.5mm厚の基板を10枚、下は0.381mm厚の基板を12枚内蔵した場合。(写真:HOYA)