エネルギー関連の市場調査などを手掛ける台湾EnergyTrendは6月14日、太陽光パネルのグローバル需要が2018年に初めてマイナス成長となり100GWを下回るとの見通しを発表した(関連記事1)。

 同見通しは、中国政府機関の国家発展改革委員会(NDRC)、財務省、国家エネルギー局(NEA)が5月31日に発表した太陽光発電に関連する政策の変更による影響を考慮したもの。

 中国国内の太陽光発電の需要は、29~35GWまで縮小するとしている。太陽光発電のサプライチェーンでは下押し圧力がかかり、供給過剰の懸念から価格の下落が既に始まっているという()。

図●当面下落が続くとみられる太陽光パネルの価格トレンド
図●当面下落が続くとみられる太陽光パネルの価格トレンド
(出所:EnergyTrend)
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 中国政府による今回の政策変更には、まず太陽光発電の2018年の導入割当量に対する買取価格の引き下げが含まれる。ただし、同政府の「太陽光貧困撲滅プロジェクト」(PAPV)に対しては、買取価格を維持する。

 導入量に関しては、分散電源システムを約10GWとする一方、地上設置型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)などは割り当てを一時中断する。その結果、中国国内の需要は2017年比40%減となる31.6GWまで急落するとEnergyTrendは推測する。

 中国が太陽光発電で世界最大の市場であることは変わらないが、今回の政策変更によって2018年のグローバル需要にも影響が及ぶと見込む。

 同社は、2018年の太陽光発電のグローバル需要は2017年比5~8%減の92~95GWとなり、他の新興市場の成長が見込める2019年まで100GWを超える水準には回復しないと推測している。

 中国の政策変更による太陽光パネルの需要の減少は、価格の下落だけでなくメーカーによる国外市場への展開を活発化させると同社は見ている。その結果、太陽光パネルの価格下落が中国国内だけでなく、グローバル市場にも飛び火することになるという。

 米国ではトランプ政権が、輸入される太陽電池や太陽光パネルに対する追加関税を通商法201条に基づいて導入している(関連記事2)。

 しかし、中国の今回の政策変更によって生じる供給過剰から、2019年の時点で関税を25%上乗せしても輸入品の方が米国内で製造される太陽光パネルより安くなるため、米国内の製造業を保護するためのセーフガード(緊急輸入制限)の効力が弱まるだろうと指摘している。