図1 燃料電池システムのテストベンチの様子。
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図2 日産が開発する燃料電池システムの作動原理。
図2 日産が開発する燃料電池システムの作動原理。
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図3 固体酸化物形燃料電池(SOFC)(左)と固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電原理の違い。
図3 固体酸化物形燃料電池(SOFC)(左)と固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電原理の違い。
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 日産自動車は2016年6月14日、バイオエタノールを改質して水素を作り、燃料電池により発電してクルマを走行させる技術「e-Bio Fuel-Cell」を発表した(図1、ニュースリリース)。既に同技術を車両に搭載し、走行できることを確認済みだ。同社は2020年頃をメドに製品化を目指したいという。

 同技術は、車両のタンクに補給したバイオエタノール(もしくはエタノール混合水)を改質器で水素とし、固体酸化物形燃料電池(SOFC)内で酸素と反応させることで発電する(図2)。発電した電力は電池に蓄電して、必要に応じて電池から駆動用モーターに電力を供給するという。電気自動車(EV)のレンジエクステンダーのような仕組みで燃料電池システムを搭載する。

 SOFCは高い発電効率が特徴で、今回のシステムでは「発電効率が6割程度」(同社)という。航続距離はガソリン車並みの600kmを達成できる見込みだ。レンジエクステンダーとして使用するので、走行状態によらず一定の割合でSOFCを作動すればよく、効率を低下させる負荷変動を少なくできる。トヨタ自動車やホンダが燃料電池車(FCV)に採用している固体高分子形燃料電池(PEFC)は、発電効率が一般に4~5割程度とされる(図3、関連記事)。

 燃料電池単体ではSOFCはコストを下げやすい。作動温度が高温なので、水素イオン(プロトン)や酸素イオンの活性化が進むため、燃料電池に触媒として使う貴金属の量を減らせるからだ。また、高圧水素を動力源とするFCVと比べて改質器は必要になるが、燃料を液体で供給できるので高価な高圧水素タンクが不要になる。