電場中でのプロトンホッピングによる、新たなN<sub>2</sub>H<sup>+</sup>を中間体とするアンモニア合成のスキーム
電場中でのプロトンホッピングによる、新たなN2Hを中間体とするアンモニア合成のスキーム
(出所:早稲田大学)
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 早稲田大学は6月7日、日本触媒と共同で、印加した半導体を触媒として活用し、低温で効率よくアンモニアを合成できる手法を開発したと発表した。このプロセスを加圧し、9気圧の条件で世界最高レベルのアンモニア合成速度(30mmol g-1h-1以上)を実現したという。

 再生可能エネルギーの電力による水素製造と組みわせ、アンモニアを水素キャリアとすることで、蓄エネルギー技術として応用できる。

 アンモニアは、次世代の水素のキャリアや、肥料合成の原料などとして重要な化合物であり、現在はハーバー・ボッシュ法を用いて高温高圧で合成されている。これまで、小型でオンデマンドな合成は難しいとされてきた。

 研究グループは、直流電場を半導体触媒に印加した場合に低い温度でも速やかに反応が起こることを見出し、アンモニア合成への展開を進めてきた。その結果、ルテニウム(Ru)を担持した触媒に数Wの電力を印加することで、200℃程度の低い温度でも速やかにアンモニアを合成できることを発見した。

 この反応の原因を電子顕微鏡観察や赤外分光分析などを用いて解析した結果、直流電場中での水素イオンのホッピングが反応を誘起していることを突き止めた。この際、N2Hが中間体となっていることを明らかにした。

 同技術と、風力や太陽光など再エネ電力を使用する水電解技術(水素製造)を併用することで、オンデマンドで1日あたり数十~100t規模のアンモニア合成装置の実現が期待される。例えば、遠隔地での肥料製造プラント、火力発電における脱硝のためのアンモニア製造プラント、離島などで風力発電を活用したアンモニア燃料(水素キャリア)合成などが考えられる。

 同研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の助成を受けて実施された。研究成果は、英国王立化学会発行の科学誌「Chemical Science」に6月5日(現地時間)に掲載された。