ソフトバンクは2016年6月9日、第4世代移動通信方式(4G)のLTE-Advancedに対応した衛星通信システムを試作開発したと発表した(ニュースリリース)。衛星通信の地上設備や通信端末に専用の通信規格を実装することなく、地上サービス用と同じ端末で衛星通信が利用できる。
東日本大震災で地上ネットワークが甚大な被害を受けた際、衛星通信が活躍したことが開発のきっかけとなった。大規模災害時に普段使用している端末で衛星通信が利用できれば、地上通信の復旧を待たずに通信ができる。さらに、災害時だけでなく、山間部や海上など地上通信のエリアを外れた場所で日常的に使用するメリットもあると同社は見ている。
静止衛星を用いた衛星通信システムは、端末-衛星-地上設備(衛星基地局)で構成されるが、地上と衛星までの距離が3万6000kmあることから7万2000kmの距離を経由する必要があり、伝搬遅延時間が約0.5秒と通常の地上システムに比べて非常に大きい。そのため、これまでは衛星通信システムごとに独自の通信規格が用いられていた。
今回、LTE-Advancedに対応した汎用の基地局と端末に伝搬遅延対策用のパラメーター値を設定するソフトを開発し、衛星基地局と衛星通信端末の試作装置を作製した。端末は、伝搬損失に対応するため9dBiと高利得のアンテナを持ち、衛星通信時は左右のアンテナを羽のように引き出して使用する。この端末は無線LANのアクセスポイント機能がある、いわゆるWi-Fiルーターで、パソコンやスマートフォンは、ここに接続して通信サービスを利用する。