「あのプロジェクトは継続して進んでいる」――。こう語るのは、英国のAdvanced Propulsion Centre(APC:先端推進システム技術センター)でビジネス開発ディレクターを務めるGarry Wilson氏である(図1)。

図1 Advanced Propulsion Centre(APC)ビジネス開発ディレクターのGarry Wilson氏
図1 Advanced Propulsion Centre(APC)ビジネス開発ディレクターのGarry Wilson氏
[画像のクリックで拡大表示]

 Wilson氏が“あのプロジェクト”と表現したのは、日産自動車と英国の産学連携コンソーシアムが共同で取り組んでいる次世代電池の開発だ。投資額は1940万ポンド(1ポンド=140円換算で約27億円)で、このうち970万ポンド(約14億円)をAPCが助成して開発をサポートしている。2017年5月に来日したWilson氏に、APCの概要や現状、EU(欧州連合)からの離脱の影響などを聞いた。

——APCとはどのような組織なのか。

 APCの事業のほとんどが共同開発に関わるものだ。英国の小さな企業が持つ優れた技術を、世界の大企業とつなげることを大きな目的としている。APCはこれまでに31のプロジェクトに総額5億4000万ポンド(約756億円)を助成してきた。投資する資金の50%を英国政府から、残りの50%を自動車業界の企業から拠出している。

図2 AGM Battery社が開発した電池セル(モックアップ)
図2 AGM Battery社が開発した電池セル(モックアップ)
[画像のクリックで拡大表示]

 我々の最大の使命は、CO2の排出量を削減する技術を支援して、低炭素社会を実現することだ。開発テーマは電池やモーター、熱マネージネメントなどがある。例えば、電池開発のAGM Battery社や蓄熱技術を持つSanamp社といった英国企業に助成金を出して支援をしている(図2)。