イタリアの電力最大手であるエネル(Enel)社は5月31日、太陽光発電に2種類の蓄電システムを統合したマイクログリッドが、チリのアントファガスタ(Antofagasta)州で稼働を開始したと発表した。

 エネルギーストレージとして、太陽光の電力で水素を製造して蓄える方法とLiイオン蓄電池を併用する。温室効果ガスの排出量がゼロで、設置や撤去、移動などの容易な「プラグ・アンド・プレイ(PnP)」型として世界で初めてのマイクログリッドとする。

 電力系統に接続する場合と、接続せずオフグリッドで利用する場合の両方に対応でき、遠隔地や離島など、電化の進んでいない地域などで特に有用という。

 太陽光発電の出力は125kW、水素による貯蔵システムの容量は450kWh、蓄電池は132kWhの容量となる。

 システム全体の容量が580kWhを超えていることに加え、太陽光の出力変動を2つの蓄電システムで平準化できるので、安定した出力を供給するエネルギー源として運用できる。マイクログリッドとしての柔軟性や安定性を確保したとする。

 チリ北部にあるアントファガスタ州のオヤーグ(Ollagüe)に建設し、同社の「Cerro Pabellón」地熱発電所で勤務する約600人の作業員宿舎の電力の一部を賄っているという。

 再生可能エネルギー事業をチリで行うために設立したグループ会社、エネル・グリーン・パワー・チリ(EGPC)社を通じて進めている。

 エネルは、設備容量ベースでチリ最大の再エネ事業者という。同社が運用する再エネ電源は、風力564MW、太陽光492MW、水力92MWで、これらの合計は1.1GWを超える。48MWのCerro Pabellón地熱発電所も運転を開始したばかり。

 Cerro Pabellónは南米では初めての地熱発電所であり、海抜4500mという高度の高い場所に建設された商用の地熱発電所としても世界初という。

 エネルは傘下の再エネ発電事業者であるエネル・グリーン・パワー社を通じてグローバルでプロジェクト開発に取り組んでいる。チリでは、2016年6月に同国最大となる160MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「Finis Terrae」を稼働させている(関連記事1)

 南米ではチリ以外に、メキシコ、ペルー、ブラジルなどでも風力や太陽光のプロジェクトを開発している(関連記事2)(関連記事3)。