会合の様子
会合の様子
(出所:日経BP)
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欧州における国際連系線
欧州における国際連系線
(出所:経済産業省)
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系統制御の役割は国ごとに異なる
系統制御の役割は国ごとに異なる
(出所:経済産業省)
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市場の広域化
市場の広域化
(出所:経済産業省)
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バランシング市場の統合
バランシング市場の統合
(出所:経済産業省)
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ドイツは配電系統が多層化
ドイツは配電系統が多層化
(出所:経済産業省)
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ドイツにおける出力抑制
ドイツにおける出力抑制
(出所:経済産業省)
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 経済産業省は6月8日、「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会」の第2回となる会合を開催した(関連記事)。

 今回は、再エネの大量導入で先行した欧州の現状や、日本にとって参考になる事例などが紹介された。日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一総括研究主幹と、京都大学 国際高等教育院の長山浩章教授が解説した。

 小笠原総括研究主幹は、「欧州における再生可能エネルギー発電導入拡大に伴う動き」と題して事例を紹介した。

 欧州では、国ごとの電源構成の違いが大きい。消費電力に占める再エネ比率が高い順に、デンマークの51.8%、ポルトガルの31.8%、ドイツの29.5%などから、0%の国も複数ある。地域としての電源の多様性が、結果的に広域の調整力の幅や柔軟性につながっていると分析している。

 国際連系線の敷設や活用では、欧州は陸続きであることもあり、日本と違ってそれぞれの国が周辺国と複数点で連系し、単独の系統となるリスクが小さい。

 ただし、特定の国において、送電線の混雑を十分に解消できない場合、ループフロー(迂回潮流)のような問題が長期間生じるリスクがある。

 ループフローとは、近隣国に送電する際に、送電線の制約によって一部を直接、対象国に送電できず、他の隣国を迂回することを指す。この際に、再エネの出力変動などを吸収しきれていないと、迂回先の隣国の電力網の運用に悪影響を及ぼすことがある。

 特に、ドイツを起因とするループフロー問題が、2000年代半ばから続いている。この問題を解消する必要性が高いこともあって、欧州における2022年までの中期的な系統増強計画では、ドイツ南部で重点的に増強する予定となっている。

 欧州では、こうした国際間連系で先行している中、国の規模が多様なこともあって、系統制御の役割は、国や送電会社によって異なっている。こうした状況を生かしながら、協調的に運用することを目指している。

 電力取引市場の広域化も進んでいる。前日スポット市場は、段階的に統合が進み、2011年までに南欧・中西欧・北欧の市場が結合、2014年にイタリアまで広がった。現在は、東欧への拡大に向けた準備が進んでいる。市場の広域化は、地域ごとの価格差の縮小といった効果も生んでいるという。

 調整力市場であるバランシング市場についても、統合することが検討されている。各国で時間の区分単位などが異なるため、その調整が必要となるが、これは15分間単位で統一した。

 日本と欧州で大きく異なる点として、欧州では、送電会社と配電会社が別である国が多いだけでなく、複数の配電会社のある国が多いことを挙げた。ドイツには800社以上、フランスには約150社、スぺインには300社以上の配電会社がある。

 中でも、ドイツでは、中電圧を管轄する地域配電会社、低電圧を管轄する地方配電会社などと、複層構造になっていることが多い。このため、送電系統運用者と配電系統運用者、配電系統運用者間で協調的に運用されている。

 再エネ発電電力は、こうした中電圧や低電圧で連系することが多い。このため、配電系統からの再エネ電力の逆潮の管理も、送電会社の重要な業務となっている。

 再エネ電力の接続費用(系統増強費を含む)の考え方は、国ごとに異なっている。負担がある程度、定式化されている国のほか、実費に基づく国もある。出力抑制の手法も国によって違う。

 ドイツにおける再エネ電力の出力抑制の実績も紹介した。2014年、2015年に出力抑制が急増した。北部にある風力発電所の発電量が、送電容量を超えたためである。今後、送電設備が増強されることから、北部の風力発電所に対する出力抑制は減る見込みという。