米国のドナルド・トランプ大統領が、メキシコとの国境沿いに建築すると公約している壁(フェンス)に太陽光パネルを設置するという案を、共和党の首脳らと6月6日に開いた会合で示唆したことが明らかとなった。

 消息筋による情報をウェブメディアの「Axios」と「Politico」が伝え、主要な米メディアが報じたもの。

 トランプ大統領は、与党・共和党のポール・ライアン下院議長やケビン・マッカーシー院内総務らをホワイトハウスに召集し、主にヘルスケアや債務の上限などについて協議した。その会合のなかで、大統領が国境の壁を太陽光パネルで建築してもよいのではと示唆したという。

 不法移民の入国を阻止するためメキシコ国境沿いに壁を作るというトランプ大統領の公約では、その建設費をメキシコ側に負担させると主張していた。しかし、メキシコ側はこの案に強く反発、その後も公約の実現はほとんど進展していない。

 与党・共和党が上下両院を押さえている米議会でも、この壁の建設費は予算化されていない。このような状況下、消息筋によると、太陽光パネルを設置し売電による収益で建設費を賄うという案もあるとトランプ大統領が示したという。

 米国土安全保障省(DHS)に対しては、今春の時点で少なくとも2社が太陽光パネルを含む国境の壁を提案していたとしている。

 米国のエネルギー政策をシェールガスや石炭などの化石燃料主体に回帰させるとみられるトランプ大統領は6月1日、気候変動を抑制するための国際的な取り決めである「パリ協定」を離脱すると発表したばかり。

 一方、メキシコ国境沿いの壁に関しては公約通りに建設するめども立っておらず、太陽光パネルによる売電収益で建設費を賄うという案は、いわば「苦肉の策」と言える。

 米国とメキシコとの国境の総延長は約3200kmである。仮に1枚ずつ並べたとしても、国境すべてをカバーするには200万枚、約500MW相当の太陽光パネルが必要となる。

 メキシコとの国境沿いの州選出の共和党議員の大半も、「国境沿いのすべてに壁を建設するのは現実的でない」とし、要所だけに壁やフェンスを設置するのが妥当との考えが支配的という。

 野党の民主党は、挙党体制で壁の建設自体に反対している。一般に環境規制には賛成する傾向が強い民主党だが、国境の壁に関しては太陽光パネル設置という案を含めたとしても反対が覆らない可能性が高いとみられる。