エナリスは05月31日、ソラミツ(東京都港区)が主導して開発を進める国産ブロックチェーンソフトウエア「Hyperledger Iroha」の電力領域におけるユースケース・パートナーに参画したと発表した。

 ブロックチェーン技術を活用したさまざまな電力サービスを検討する。太陽光発電や蓄電池、需要機器のデマンドレスポンス(需要応答)など、個人の持つエネルギーリソースを有効に活用することで、分散型エネルギー社会への移行を促進し、将来的に個人が自由に電力を取引できる社会の実現を目指す。

 「ブロックチェーン」は、二者間の取引を効率的かつ検証可能な方法で記録できる分散台帳で、仮想通貨の中核技術になるとの見方もある。従来の中央管理型とは異なり、取引の当事者同士が直接、取引情報をやり取りし、その情報を複数の分散台帳に記録し、データを分散・共有することで、中央管理者が不在でもデータ改変を防止できる。

 速やか、かつ安全に個人間で取引できる技術として注目されており、海外では既に電力データをブロックチェーンに記録した上で、電力取引に活用するなど、エネルギー分野に応用する試みも始まっている。

 エナリスでは、「近い将来、再エネ設備や電気自動車(EV)、蓄電池がさらに普及し、自由に電力を融通し合って電力を効率的に活用できる分散型エネルギー社会が訪れる」と予測している。ただ、「分散型エネルギー社会を実現するには、法人や個人、電気事業者が自由かつ安全に電力を取引できる環境を整備する必要がある」としている。

 「Iroha」のブロックチェーン技術は、デジタル決済、契約管理、サプライチェーン・マネジメントなどが当事者間で対応できるため、こうした電力取引の環境を実現できる可能性があるという。

 例えば、小売電気事業者間で台帳を共有し、事業者間で取引や複雑な精算を低コストかつ簡単な手続きで安全に行えると想定される。消費者は、ライフスタイルに合った多彩な料金メニューや付加サービスを、簡単な手続きで利用でき、将来的には、太陽光の余剰電力や省エネで生み出したネガワットを個人間で取引できる可能性もある。

 今回の取り組みでは、ブロックチェーン技術をスマートメーターに組み込んだシステム開発の実績を持つ会津ラボ(福島県会津若松市)の開発協力と、Irohaのブロックチェーン技術を用いた学内通貨実証の経験を持つ会津大学の技術協力のもと、新しい電力サービスの商用化に向けた実証などを行っていく。

 エナリスは、今年3月に発表した中期経営計画の中で、将来の新しいプラットフォームサービス「でんきがプラスワン(仮称)」を公表している。ブロックチェーンを活用したサービスもその機能のひとつとして、小売電気事業者などに提供することを想定している。

 「Iroha」は、米IBMの「Fabric」、米Intelの「Sawtooth Lake」に続いて3番目のHyperledgerプロジェクトに受諾されたオープンソースのブロックチェーンソフトウエア。高速で高いパフォーマンスのアプリケーションが構築可能で、開発しやすいシンプルな設計を採用する。また、モバイルアプリを簡単に開発できるiOS/Androidライブラリーを用意している。