「スマートシステム研究棟」の外観
「スマートシステム研究棟」の外観
(出所:産業技術総合研究所)
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PCSの系統連系試験室
PCSの系統連系試験室
(出所:産業技術総合研究所)
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国内最大の電波暗室
国内最大の電波暗室
(出所:産業技術総合研究所)
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 産業技術総合研究所(AIST)の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は5月30日、福島県郡山市で2017年度・研究報告会を開催した。

 FREAは、福島県が掲げる再生可能エネルギーによる地域の自立と産業活性化などの復興計画を支援するため、2014年4月にAISTが設立した。報告会は2015年春から毎年、開かれている。

 報告会では、経済産業省の山崎琢矢・新エネルギー課長による基調講演などの後、再エネの分野ごとの研究テーマに関し、最新の研究成果が発表された。

 太陽光分野では、「分散電源システムのスマート化に向けたパワーコンディショナー(PCS)の今後の方向性」「結晶シリコン太陽電池におけるイオン注入技術」「モニタリングシステムの故障診断アルゴリズムの開発」などのテーマで報告があった。

 「分散電源システムのスマート化」では、FREAの大谷謙仁エネルギーネットワークチーム長が講演した。FREAでは、2016年4月に「スマートシステム研究棟」が開所した。同棟は、国内最大の電波暗室を備え、最大3MW級の大型PCSの試験・評価が実施できる。今回の発表は、この施設を活用した最新の成果を公表した。
 
 大谷チーム長は「太陽光発電は、世界的に発電規模が大型化しており、PCSはそれに合わせて3~5MW程度まで大型化することで、低コスト化していく傾向にある」と分析する。スマートシステム研究棟では、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の直流入力1500Vの2.7MW機を使って、系統連系試験を実施した。これにより、大型PCSの長期信頼性試験の手法を確立し、大型PCSの高機能化に関する国際標準化の可能性を検討する。

 加えて、「今後、PCSは大型化の次に、スマート化に向けた技術開発が進んでいく」(大谷チーム長)と言う。PCSのスマート化とは、通信機能と高度な制御機能を持つことで、小型分散電源が電力系統と協調したり、分散電源同士が接続したりするイメージという。これが実現すれば太陽光などの再生可能エネルギーの大量導入が可能になるとする。

 同チームでは、今後、こうした「スマートインバーター」の試験方法、制御方式の開発に取り組む。その先には、マイクログリッドの最適な設計方式や、多数の分散電源を全体最適化するVPP(仮想発電所)制御方式にもつながっていくと言う。