黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子から構成される光触媒の電顕写真
黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子から構成される光触媒の電顕写真
(出所:大阪大学)
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 大阪大学は5月29日、紫外光・可視光・近赤外光の照射で水から水素を効率よく生成できる、黒リンを用いた光触媒を開発したと発表した。従来の光触媒は、太陽光の3~4%に過ぎない紫外光を利用するため、水から水素への太陽エネルギー変換効率が低かった。

 研究グループは今回、紫外・可視・近赤外光領域に幅広い吸収を持つ黒リンと、紫外・可視光に吸収を持つチタン酸ランタン(La2Ti2O7)を数層に重ねた超薄膜に、可視光に吸収を持つ数ナノメートルサイズの金ナノ粒子を組み合わせた複合体を合成した。

 この複合体で、黒リンが可視・近赤外光に応答する光増感剤として、金ナノ粒子が可視光に応答する光増感剤として働き、励起電子がチタン酸ランタンに移動し、プロトン還元により水から水素を効率よく生成できることを確認した。

 現在の太陽光エネルギーによる水素製造は、高コストなのが課題であり、高効率の光触媒の開発が望まれていた。今回の研究成果は、水素エネルギー社会の根幹となる太陽光による水素の効率的な製造につながり、環境問題の解決に大きく貢献すると期待される。