ナノコンポジット光電極の模式図(図:東京大学のプレスリリースより)
ナノコンポジット光電極の模式図(図:東京大学のプレスリリースより)
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Ir:SrTiO3半導体の断面STEM像(写真:東京大学のプレスリリースより)
Ir:SrTiO3半導体の断面STEM像(写真:東京大学のプレスリリースより)
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 東京大学は2016年6月3日、金属ナノ柱状構造が酸化物の中に埋め込まれた「ナノコンポジット結晶」を簡単に作製できるプロセスを開発したと発表した(ニュースリリース)。太陽光で水を分解して水素を製造する光触媒に用いることで、水分解の効率を著しく向上できる。

 一般的に金属と酸化物のコンポジット構造を作製するには、高価なリソグラフィーや複数の微細加工プロセスを用いたトップダウンのプロセスが必要となり、コスト増の要因となっていた。今回、自ら結晶が成長するボトムアップ技術である自己集積化プロセスを取り入れて作製した。

 高品質な薄膜作製が可能なパルスレーザー堆積法を用いて薄膜を作製すると同時に、その中に金属ナノ柱状結晶を自己集積的に成長させた。結晶が成長する温度、酸素圧、成長スピードを最適化することで、最新のトップダウン手法でも難しい直径5nm・長さ20nmという非常に小さいナノ柱状構造の自己集積化を可能にした。

 今回のような構造における金属と酸化物の接合界面はショットキー接続と呼ばれており、プラスとマイナスの電荷を効率的に分離させることができる。金属のナノ柱状結晶を薄膜内に無数に分散させることで、水の分解反応を促進させた。特に、ナノ柱状結晶の構成元素にイリジウム(Ir)、薄膜の主成分にチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の組み合わせで、非常に高い効率を示した。

 名古屋大学、高エネルギー加速器研究機構、東京理科大学との共同研究。今回の研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に6月3日掲載された。