太陽光発電電力を送電網に流さない仕組みを構築
太陽光発電電力を送電網に流さない仕組みを構築
(出所:NEDO)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5月31日、ドイツにおいて、太陽光発電、蓄電池、ヒートポンプ、HEMS(住宅エネルギー管理システム)を組み合わせたシステムの実証運転を開始したと発表した。

 NTTドコモ、NTTファシリティーズ、日立化成、日立情報通信エンジニアリングと共同で取り組んでいる「ドイツ連邦共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」の一環として手がける。

 ドイツ西部に位置する、ラインラント=プファルツ州シュパイヤー市内にある2棟×16戸の集合住宅を実証拠点とした。

 蓄電技術、ヒートポンプ給湯機による蓄熱技術、情報通信技術を組み合わせ、太陽光発電の自家消費率を向上するシステムを構築し、需要家の経済的な利点の拡大や電力系統の安定運用に貢献するモデルを確立する。

 ドイツは現在、電力需要の20%以上を再生可能エネルギーで賄っている。同国政府は、2020年に35%、2050年に80%にする目標を掲げている。

 太陽光発電のコストが低減し、すでにグリッドパリティ(自家発電のコストが電力購入コストと同等となること)が成り立ち、固定価格買取制度は事実上終了している。このため、太陽光発電設備を持つ需要家は、太陽光発電電力を売電する利点が失われた状況になっている。

 また、送電網の容量の制約や電力品質の低下の観点から、太陽光発電電力の送電を受け入れにくい状況にある。そこで、住宅用の太陽光発電システムにも出力抑制を課している。

 こうした状況から、太陽光発電電力をできるだけ自家消費し、電力会社に売電しない仕組みを構築することが喫緊の課題となっている。

 NEDOは、100%再エネによる電力、熱の供給を目標として掲げている同市において、 「エネルギー自己消費モデル」を実現するスマートコミュニティ実証事業を実施することにした。同市、シュパイヤー電力公社、住宅供給公社であるゲボ社と協力して実施する。

 実証システムは、日射量データや各世帯の負荷パターンに基づき、太陽光発電電力やエネルギー消費量(電力、熱)を予測するとともに、仮想の電力料金モデルに応じて、電力系統への送電や、需要家のエネルギー料金を最小化するように、蓄電池やヒートポンプを制御する。

 2棟の集合住宅は、世帯単位、棟単位のタイプに分け、それぞれにおいてエネルギー自家消費率を最大化していく。2018年3月までの約2年間、実際の生活環境のなかで実証システムを運用し、効果、信頼性、経済性を評価する。

 日立化成も同日、今回の実証事業に関して、定置型のLiイオン畜電池、実証システム全体を最適に制御するHEMSを構築したと発表した。

 同社の発表では、9月からはLiイオン畜電池に加え、鉛蓄電池を組み合わせ、ハイブリッド蓄電システムに拡張する予定としている。