製造設備もなければ、技術開発部隊もないし、デザイン部隊もいない。そんな一風変わった“メーカー”が現れた。雑貨を扱う、TRINUSだ。2016年4月15日、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」を通じて、初の製品「PLANT’S JEWEL」(販売サイト)の受注を始めた。切り花をいける際に使うと、花留めの役割と水の防腐剤の役割を果たす。

 同社代表取締役の佐藤真矢氏は自身を「ファブレスメーカー」と位置付けるが、同社にあるのは、中小企業の持つ埋もれた素材や加工技術を探し出す「技術の目利き」と、約2500人の登録デザイナーによるオープンな製品コンセプトの開発環境、実製品化に向けブラッシュアップを担う協力デザイナーという3つ資産だ。製品化時には、その都度、協力会社を探して設計、生産をする。いわば、素材・加工技術というシーズから出発してデザインの力で売れる商品に仕立て上げるプロデューサーとなり、販売していくメーカーだ。素材や加工技術は、社長の佐藤氏自身が展示会などに足しげく通い、そこで見つけ出す。

TRINUS代表取締役の佐藤真矢氏。
TRINUS代表取締役の佐藤真矢氏。
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 同社の製品第1号であるPLANT’S JEWELも、もちろんこのシステムを活用して実用化に至っている。シーズとなったのは、水の防腐剤の役割を実現する抗菌性めっき技術「KENIFINE」だ。神戸製鋼所が開発した技術で、めっき加工などを行う表面処理メーカーに技術ライセンスしている。ライセンスを受ける表面処理メーカーの1つ、三光製作が「機械要素技術展」に出展しているのを佐藤氏が見つけたことが、製品開発の起点となった。