メタロッドアンテナ各種
メタロッドアンテナ各種
1本のアンテナには、垂直偏波と水平偏波の2系統のアンテナ素子が実装されている。周波数は3.5GHz帯(3.48G~3.6GHz)に対応
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説明資料
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1本のアンテナには、垂直偏波と水平偏波の2系統のアンテナ素子が実装されている。周波数は3.5GHz帯(3.48G~3.6GHz)に対応
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上の説明資料の垂直面内指向性の拡大写真
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水平方向から約40度下向きに指向性のピークを持つ電波が放射される
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 電気興業は2016年5月末の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2016」に、3.5GHz帯の小セル向けメタマテリアルアンテナ「メタロッドアンテナ」を出展した。アンテナ素子部分の直径は12mmで、競合の3.5GHz帯小セル向けアンテナ向けに比べて数分の1と細く、200gの重さしかない。しかもセル間の電波干渉を大きく低減できるとする。日本で2016年6月に始まる、LTE-Advanced(LTE-A)に基づく次世代移動体通信の商用サービスに使われる見通しという。

 メタマテリアルとは、単位セルと呼ばれる電磁波の波長に対して十分小さい素子から成り、電磁界を制御する新媒体を指す。単位セルの設計を変えることで、あたかも新材料を選ぶように、実効的な誘電率や透磁率を変えることができる。

入射する電磁波が「く」の字に曲がる

 単位セルの設計によっては、実効誘電率、実効透磁率、そして実効屈折率をすべて負値にすることができる。この場合、「左手系メタマテリアル」と呼ばれる。左手系メタマテリアルに入射する電磁波は、屈折角が負値となる。つまり、「く」の字のように折れ曲がる角度に向かう。

 電気興業が開発したメタロッドアンテナもこの左手系メタマテリアルアンテナである。同社によると、まっすぐに立てたアンテナに下から電力を入力すると、アンテナから下向きに一定の角度で電波が放射されるという。これは上述の「く」の字に電波が屈折する現象を利用したものである。

 一般の金属や誘電体材料などをアンテナ素子に用いると、アンテナの下から入力した電力は、アンテナ素子に対して水平な向き、あるいは上向きの指向性をもって放射される。下向きの指向性が得られるのは左手系メタマテリアルを用いたアンテナならではである。

 この下向きの指向性を備えるアンテナ特性は、小セルを高密度に配置するLTE-Aのセル設計に非常に都合がよい。セル間の電波干渉を低減できるからだ。

 このメタマテリアルは、電気興業と防衛大学校、千葉工業大学の共同研究の成果だとする。2015年3月の電子情報通信学会総合大会などで発表済みだ。