電力貯蔵システム向けの二次電池の世界市場
電力貯蔵システム向けの二次電池の世界市場
(出所:富士経済)
[画像のクリックで拡大表示]

 調査会社の富士経済(東京都中央区)は5月23日、電力貯蔵システムに採用される二次電池(蓄電池)の世界市場の展望を発表した。

 Liイオン電池、Pb電池(鉛電池)、NaS電池(ナトリウム硫黄電池)、レドックスフロー電池(酸化還元反応を活用した電池)、Ni水素電池といった二次電池、電気二重層キャパシタ(大容量のコンデンサ)を対象とした。

 これらの二次電池は、再生可能エネルギーの自家消費の広がり、電力システム改革の進展に伴う新たなエネルギー関連サービスの活性化、再エネの導入量の増加に伴う系統安定化といったニーズの高まりによって、市場が拡大すると、予想している。

 用途別では、系統用の電力貯蔵システム向け市場が最大となる。2015年の652億円から、2025年には3174億円 と、市場規模が4.9倍に拡大する。

 変電所や既存の火力発電所などの系統設備、発電事業用の太陽光・風力発電システムに併設される。

 現在の市場は、米国におけるアンシラリーサービス(周波数の安定化制御サービス)向け、世界各国の離島におけるマイクログリッド向けなど、系統の安定化を目的とした実証プロジェクトでの導入が中心となっている。今後も当面は、こうした用途が市場を牽引していく。アンシラリーサービスは今後、欧州でも拡大する見通しとなっている。

 日本では、現在は実証試験による導入が大半となっている。北海道、九州、沖縄、その他の島嶼部における、再エネの大量導入に向けた系統安定化向けや、離島におけるマイクログリッド向けが多い。2016年以降は、電力システム改革の進展に伴い、アンシラリーサービスの普及する環境が整い、需要の拡大が期待されるとしている。

 太陽光・風力発電システムとの併設向けは、現状では、米国や欧州、アジアなどで導入が先行している。2018年以降、多くの地域において、再エネの発電コストが既存の電力コストと同等か安価になる「グリッドパリティ」を迎えることから、太陽光・風力発電システムの普及が加速し、それに伴って併設する電力貯蔵システムの需要も増すとみられる。

 二次電池の種類別では、系統用の電力貯蔵システムでは、Liイオン電池の採用が多い。系統安定化向けなどの用途は、当初、Pb電池やNaS電池の導入が先行していたが、現在ではLiイオン電池が主流となっている。

 今後、Liイオン電池の低価格化が一層進むことで、アンシラリーサービス向けを中心に、さらに導入が拡大していくと予想している。NaS電池、レドックスフロー電池は、4時間超の出力時間が求められる用途で導入が進む。Pb電池は安全性やコスト重視の用途で、特に風力発電の出力安定化向けを中心に導入が拡大する。