人工島のような実用機、飲料水の供給源にも

 実用機は、直径約14m、同約32mの二つを開発することを計画している。直径が大きくなることで、基幹ユニットなどを設置するスペースが増え、縦横比が小さくなるために波に対する安定感が増す。

 直径14mのシステムは、波の動きに合わせて海面で上下に動くフロートは四つ搭載し、出力は1.2MWとなる。フロートは直径5m、高さ3mで、最低で高さ50cmの波があれば発電できる。

 直径32mのシステムになると、出力は5MWとなるほか、最上部をヘリポートとして使えるようになり、人工島のようなイメージとなる。

 実用機は、100%再生可能エネルギーで循環するシステムとなる。実証機では、曳航時に位置制御用のスラスターを稼働させるための補助動力として、ディーゼル発電機を搭載していた。

 実用機では、スペースが広くなるため、この補助動力として蓄電池か、水素を使った発電技術(hydrogen powered generator)の採用を検討している。これによって100%再エネとなる。

 また、ギアの潤滑油の代わりに使うための淡水の製造量も増やせる。余った水は、飲料水として供給できるようになる。

 これによって、再エネ電力の発電とともに、飲料水を供給できるようになる。この点を魅力に感じた海外の離島や砂漠の多い地域などから、すでに引き合いが来ているという。

 同社では、実用機による発電コストとして、5.0~7.0円/kWを目安に示し、他の発電技術に対して有利としている。地方自治体などのほか、地域の中小企業などにとっても、導入・運用できるコストで、さまざまな企業・団体にチャンスがある技術とする。

 海岸から約3km離れた沖合に設置することを想定し、稼働期間は50年間で試算した。波力発電システムの購入・設置費のほか、漁業関連の対策費3億円、海底ケーブルの敷設費、保険、O&M(運用・保守)など商用運転を前提に見積もったとしている。売電額に対して20%に設定しているという、同社へのロイヤリティも含む。

 O&Mには、部品やコンポーネントの交換費も含んでいる。交換が想定されるのは、頻度が高い順に、淡水製造ユニットの脱塩フィルター、ジャイロの駆動用タイヤ、ギアボックスとしている。

 今後、技術力の高い日本企業と共同で、「50年間、交換が不要なギアボックス」や、回生電力を使えるようにするインバータなどを採用できれば、さらに信頼性が高く、かつ高効率な波力発電システムを実現できると見ている。

 実用機は、設置場所の環境や、波の特徴などによって、波を受けて上下するフロートの仕様などを最適にしないと、想定した出力を得られないとしている。

 このため、電力会社や漁業関係団体などと協議しながら設置場所を定め、最適なシステムを設計するようだ。

 また、地方自治体をはじめとする地域の関係者に対して説明責任を果たし、十分に理解を得ることが、実用段階でのポイントとする。