機械式波力発電装置
機械式波力発電装置
(出所:三井造船)
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 三井造船は5月10日、東京都・伊豆七島の一つである神津島の外洋に、日本で初めてとなる「機械式波力発電装置」を設置し、波力発電の実証試験を開始したと発表した。新たな運転制御方法の効果、荒天時の耐久性の確認などの実証項目を確認する。

 機械式波力発電装置は、波によるフロートの上下運動を機械的に回転運動に変換して発電する。波が発電装置にあたると、そろばん珠状のフロート、その上部にあるブリッジ、ブリッジの中央に付く下向きのロッドが一体となって上下運動を行う。全長は約13m、フロート直径は2.7m、スパー(円柱部)直径は1.0m、空中重量は約10t。

 欧米に比べて比較的、波の持つエネルギーが小さい日本近海での発電効率の上昇と、豊富な漁場との共存を考慮して、設置面積を最小化した。三井造船が造波装置で培ってきた制御技術を用い、発電機をモーターとして利用して装置を励振させることで、より大きな発電量を得られるようになったという。

 神津島の北側に位置する黒根沖の離岸距離800m、水深32mの外洋に設置する。定格出力は3.0kWで、実証期間中の平均発電量は600Wを想定する。今回の実証試験では、発電した電力量を逐次把握し、各種計器や通信機器で電力消費する。余りは容量20kWhのリチウムイオン電池に充電し、発電量が低下した際のバックアップに役立てる。神津島との系統連系は行わない。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究事業で、2011年度から開始した「海洋エネルギー発電システム実証研究」の一環。現地施工は五洋建設、海洋観測・シミュレーションは東京大学が協力した。

 三井造船は2008年から機械式波力発電の研究を進めている。約9年かけて沖合に設置可能な発電装置を完成し、小規模ながら実証実験できる段階に達した。4月17日に設置工事を完了し、同日から発電を開始した。実証試験は2017年夏ごろまで実施する予定。