米Analog Devices社の日本法人であるアナログ・デバイセズは、産業機械の予知保全に向くMEMS加速度センサーの新製品について、報道機関向け説明会を2017年5月10日に開催した。故障などの予兆となる高周波振動を捉えるために、「広帯域性(周波数および加速度)」「低ノイズ性」「温度安定性」といった性能を兼ね備える点が特徴である。

1軸のMEMS加速度センサー「ADXL1001」「同1002」
1軸のMEMS加速度センサー「ADXL1001」「同1002」
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3軸のMEMS加速度センサー「ADXL356」「同357」
3軸のMEMS加速度センサー「ADXL356」「同357」
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 新製品は、1軸の「ADXL1001」「同1002」と、3軸の「同356」「同357」である。そのうち同1001/1002/356はアナログ出力タイプ、同357は同356にA/D変換機などを内蔵したデジタル出力タイプとなっている。価格(1000個購入時の単価)は、同1001/1002が29.61米ドル(1米ドル=115円換算で約3410円)、同356が28.60米ドル(同3290円)、同357が31.78米ドル(同3650円)。

最初に検出できる予兆が「振動」

 新製品の特徴の1つとして、非常に高い周波数および加速度の振動を捉えられることが挙げられる。アナログ・デバイセズのリージョナルマーケティング&チャンネルグループのマーケティングマネージャーを務める高松創氏によれば、産業機械における故障の予兆として最初に検出できる物理現象が振動であり、その振動は人が感知できないぐらい高周波だという。そのため、故障の影響が大きい“ミッションクリティカル”な産業機械では、予知保全の手法として振動周波数監視を採用していることが多い。新製品は、そのような高周波振動を捉えるためのセンサーとして位置付けられている。振動の加速度は周波数の2乗に比例するため、周波数だけではなく加速度についても広帯域に対応させた。

産業機械における故障の予兆は、まず「振動」として出現し、進行度に応じて「潤滑油変化(色やpH)」「ノイズ(音)」「熱」「煙」と徐々に増えていく。
産業機械における故障の予兆は、まず「振動」として出現し、進行度に応じて「潤滑油変化(色やpH)」「ノイズ(音)」「熱」「煙」と徐々に増えていく。
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 周波数と加速度に関する具体的な仕様は、以下の通りである。共振周波数は、ADXL1001/1002が21kHz、同356/357が5.5kHz。計測可能な加速度の範囲は、同1001が±100g、同1002が±50g、同356/357が±10/20/40gとなっている*1。一方で、ノイズ密度は同1001が30μg/√Hz(100~10kHz)、同1002が25μg/√Hz(同)、同356/357が80μg/√Hz(計測可能な加速度の範囲を±10gとした場合)と小さい。従来、それぞれの性能については同等レベルの製品が存在していたが、広帯域と低ノイズをこのレベルで兼ね備える製品はなかったという。

*1 ADXL356は、計測範囲を選択するためのピンが設けられており、±10/20gのどちらかを選択できる「同356B」と、±10/40gのどちらかを選択できる「同356C」という2種類の製品がある。同357はデジタル出力なので、±10/20/40g(正確には±10.24/20.48/40.96g)のいずれかをプログラマブルに設定可能である。

 新製品のうちADXL1001/1002は、広帯域性および低ノイズ性が特に高い製品である。そのため、故障によって甚大な損害が生じるような産業機械など厳密な計測が求められる用途に向く。一方、同356/357は低消費電力が小さく*2、耐環境性に優れるハーメチック(セラミックス)パッケージを採用しているので、人の目が細かく行き届かないような場所で稼働する産業機械の遠隔監視用途に向くという。

*2 計測モードの消費電流はADXL356が150μA、同357が200μAである(同1001/1002は1.0mA)。