電力貯蔵システム向け蓄電池の世界市場
電力貯蔵システム向け蓄電池の世界市場
(出所:富士経済)
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 富士経済は5月9日、2025年の電力貯蔵システム向け蓄電池の世界市場は、2016年(1649億円)比4.7倍の7792億円に達するとの予測を発表した。

 固定価格買取制度(FIT)の終了に伴う自家消費需要の増加、各種エネルギーサービス用電源として実証が進められているVPP(仮想発電所)用途での採用、再生可能エネルギーの増加に伴う系統安定化ニーズの高まりなどにより、大幅な市場拡大を予想している。

 最も伸びるのはLiイオン電池で、韓国系・中国系メーカーの台頭による単価の大幅下落に伴い、多様な用途で採用が増加。従来想定されていなかった数十~数百MWhの大規模案件や、4~5時間程度の長時間、出力する用途での採用もみられる。

 NAS電池やレドックスフロー電池は、再エネ導入拡大に伴う系統安定化ニーズの高まりを受け、出力4時間超の長周期対策を中心に採用が増えている。鉛電池は、豊富な導入実績や低価格の優位性により非常用電源などで採用されている。

 用途別では、住宅用蓄電システム向け市場は、非常電源や深夜電力や太陽光の電力を蓄電し、電気料金単価の高い時間帯に使用するピークシフト用途が中心で、2025年は2016年(510億円)比4.1倍の2080億円と予測する。  これまでは鉛電池がイニシャルコストを重視する非常用電源用途での採用が多かったが、今後、サイクル性能や製品寿命に優れるLiイオン電池の価格低下に伴い、系統電力の利用を抑制するデマンドレスポンス(DR)用途での採用拡大が想定され、大きく伸びると予想している。

 非住宅用電力貯蔵システム向け市場は、ピークシフトやピークカット、非常用電源、自家消費用再エネの負荷平準化用途などが主で、2025年は2016年(216億円)比7.1倍の1533億円と予測する。Liイオン電池が急激な価格低下により伸びており、今後はピークカット用途で、2020年以降にはDRやVPP用電源での採用が増加するとみられる。

 また、鉛電池はLiイオン電池への置き換えで需要が減り、NAS電池は出力1~2MW級の大型需要家、レドックスフロー電池は日本では出力500kW~1MW級の中・大型需要家、北米・中南米などでは出力100~500kW級の小・中型需要家への導入が進むと予測する。

 変電所や発電所に設置する系統蓄電池、発電事業用の太陽光・風力発電システムでの再エネ併設型電池の市場は、2025年は2016年(925億円)比4.5倍の4180億円に達すると予測する。

 系統設備への負荷軽減や、容量増強などによる系統安定化を目的とした電力貯蔵システムの利用が増えていくほか、スマートグリッドやマイクログリッド構築における域内電力の需給管理や、周波数安定化を目的としたアンシラリーサービスでの利用も増えている。現状はLiイオン電池の採用が多いが、一部のエリアではNAS電池やレドックスフロー電池も採用されている。

 富士経済の専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査で、社内データベースを併用した。調査期間は2016年12月~2017年3月。