国立がん研究センター理事長の中釜氏
国立がん研究センター理事長の中釜氏
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 遺伝子情報を使ったオーダーメイドのがん治療が受けられる日もそう遠くないかもしれない——。国立がん研究センター 理事長に2016年4月1日に就任した中釜斉氏(元 国立がん研究センター研究所長)は、今後ゲノム情報に基づき、個々人に最適化した医療を提供するゲノム医療の実現に向けた取り組みを強化していく姿勢を2016年5月10日の所信説明会で示した。

 説明会では、今後の強化課題として2つを挙げた。ゲノム医療を提供するための体制整備と、希少がんなどのアンメットメディカルニーズの課題解決に向けた取り組みだ。

 同センターは2013年からゲノム医療実現のために、「TOP-GEAR(Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response by cancer treatment)プロジェクト」を進めている。同センターが構築した遺伝子診断システムを使って、2016年5月からゲノム医療の臨床応用に向けた取り組みを本格的に始める。併せて、「NCCゲノム医療推進本部」を設立し、ゲノム医療の実現に向けた環境整備を進め、政策提言などにもつなげていく考えだ。

 中釜氏は、「ゲノム医療実現のためには国全体として意思を統一すべきだが、そういった連携は米国やフランス、英国に比べて日本は後れている。関連機関の連携は必須だ」と指摘。そこで、同センターはゲノム医療を国内で実装するために、複数の医療機関や解析を行う機関とネットワークを構築。データベースを共有し、将来的には同センターのみならず全国でゲノム医療を実現できる環境づくりを目指す。