発電システムのイメージ(左)、システムとパネルの構造(右)
発電システムのイメージ(左)、システムとパネルの構造(右)
(出所:住友電気工業)
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 住友電気工業は5月9日、モロッコの太陽エネルギー庁と、出力1MWの集光型太陽光発電(CPV)プロジェクトの実証契約を締結したと発表した。

 5月4日にモロッコのカサブランカで開催された、第4回日本・アラブ経済フォーラムを機に締結した。

 同社が開発した集光型太陽光発電システムを採用する。メガクラスの発電システムへの適用は初めてになるという。2016年11月に稼働し、2021年5月までの約5年間、実証する予定。

 同社は、モロッコにおいて集光型太陽光発電の実証を重ねてきた。2013年4月に、カサブランカの郊外にあるグループ会社の敷地内において実証実験を開始した。2015年9月以降は、ワルザザートにあるモロッコの太陽エネルギー庁の研究施設の敷地内に、出力20kWの発電システムを設置し、実証実験に取り組んできた。

 今回の契約に基づいて、出力1MWの発電システムを構築し、運用を実証する。発電量の計測や品質を分析し、気象や砂塵などの状況に左右されない安定した発電の実現を目指す。

 集光型太陽光発電は、砂漠のような高温で乾燥した地域に向く特徴がある。空気中の水分が少ないため、直達光の割合が多く集光効率が高いうえ、温度依存性の少ない発電素子を選ぶことで、高温でも発電ロスを減らせる。

 同社の集光型太陽光発電システムは、化合物半導体型のセル(発電素子)を使い、太陽を追尾しながらレンズで日光を集めて発電する。採用したセルは、高温時の発電ロスが少ないことに加え、変換効率は、一般的な結晶シリコン型に比べて、約2倍になるという。

 導入するパネルは、厚さが約120mm、重さが約8kgの薄型軽量タイプとなる。軽くて薄いことから、輸送や設置作業の効率が向上するほか、より多くの枚数を架台に搭載できるといった利点があるとしている。

 今後はモロッコ以外の中東諸国をはじめ、世界各地の高日射地域において、集光型太陽光発電事業を展開していく。

 モロッコは、アフリカ大陸の北西部に立地し、南部はサハラ砂漠に面するなど、日射量が多く、太陽光の活用に向く。モロッコ政府は、電力の自給率を向上するため、2020年までに合計出力2000MW(2GW)、2030年までに同4500MW(4.5GW)の太陽エネルギー発電設備を導入する方針を掲げている。