トクヤママレーシアの太陽電池向け多結晶シリコン製造設備 
トクヤママレーシアの太陽電池向け多結晶シリコン製造設備 
(出所:トクヤマ)
[画像のクリックで拡大表示]
太陽電池向け多結晶シリコンの市況 
太陽電池向け多結晶シリコンの市況 
トクヤママレーシアは2014年10月に第2期営業運転を開始した(出所:トクヤマ)
[画像のクリックで拡大表示]

 太陽電池向けの素材市場で、中国企業の台頭などにより日本メーカーのコスト競争力が低下し、海外工場での生産体制を見直す動きが目立っている。

 日本板硝子は、連結子会社であるピルキントンソーラー(太倉)有限公司(PST)が、中国における太陽光パネル用の板ガラス事業から撤退すると発表した。今回の決定に伴い75億円の減損損失を2016年3月期に計上する。

 PST は、中国で結晶シリコン型太陽光パネル向けに板ガラス(カバーガラス)を製造・販売してきた。しかし、「近年、同社製品に対する需要の減少が続き、今後の収益性も改善が見込めないため、同事業からの撤退を決めた」という。6月30日をもって撤退する。

 なお、日本板硝子グループが手掛けている薄膜系太陽光パネル用の透明導電膜付きガラス事業は継続し、製造・販売ともに影響ないとしている。

 結晶シリコン型太陽光パネル向けのカバーガラスについては、旭硝子も2012年11月に米国の生産工場を閉鎖すると発表した。閉鎖したのは、AGCガラス・ノースアメリカのキングスポート工場(米国テネシー州)で、この閉鎖により、旭硝子グループにおける太陽光パネル向けカバーガラスの生産能力が3割以上削減された。

 撤退した理由について、旭硝子は「世界の太陽光向けカバーガラス市場の成長が鈍化し始めたことと、中国ガラスメーカーの台頭による競争激化」を挙げている。旭硝子グループは、アジアや欧米の4拠点でカバーガラスを生産しているが、現在の市場環境に合わせた生産体制の見直しを進めている。

 なお、旭硝子も、米国スプリングヒル工場(カンザス州)で生産している薄膜系太陽光パネル向けのガラス基板については今後も継続する。

 中国ガラスメーカーが、結晶シリコン型太陽光パネル向けカバーガラスの生産を拡大させている中、日本のガラスメーカーのコスト競争力が低下し、より付加価値の高い薄膜系太陽光パネルのガラス基板に特化していく方向性が鮮明になってきた。

 太陽電池向けの素材に関しては、トクヤマも多結晶シリコンを製造するトクヤママレーシアに関し、2016年3月期決算で1234億円の減損損失を計上している。多結晶シリコン市況の下落などによる事業環境の悪化を踏まえ、コストダウンを徹底するなど、中長期の事業計画を見直したことが原因だ。