欧州の大手送電事業者TenneT社とドイツのベンチャー企業で定置型蓄電池の開発や製造を手がけるsonnen社は5月2日、「ブロックチェーン技術」を活用して定置型蓄電池を集約(アグリゲート)し、送電網の安定化を行う実証プロジェクトを共同で開始すると発表した。
両社は、今回の共同プロジェクトがこの分野では初めてであり、再生可能エネルギーを今後さらに導入していくうえで先駆的な一歩となることを強調している。
ブロックチェーン技術は、取引情報をネットワーク全体で共有・管理する仕組みで、仮想通貨「ビットコイン」の基盤となっている。今回のプロジェクトでは、これを家庭用の定置型蓄電池の集約による送電網の安定化で活用する。
TenneT社がこのプロジェクトで目的としているのは、蓄電池やブロックチェーンといった新しい技術を活用することで、風力発電設備からの電力を制限するといった緊急対応の必要を軽減させることという。
実際、ドイツでは近年、風力発電設備が大幅に増加した結果、風況の良い状況下で送電インフラの容量を超えた電力が発生し、送電事業者が電力の受け入れ制限を緊急発動するといった事態の発生頻度が高まっている。
このような緊急対応は、2016年だけでもドイツで約8億ユーロのコストとなったという。こうしたコストは、最終的には電力の消費者に転嫁され、電力価格が上がる一因となっている。TenneT社は今回のプロジェクトで蓄電池の持つ柔軟性を活用して風力の受け入れ制限を低減することで、電気代を抑えることを目指す。
ブロックチェーンには、IBMが開発した技術を利用する。IBMのブロックチェーン技術は、「Hyperledger Fabric」というフレームワークに基づいており、リナックス財団が管理するプロジェクトの一つとなっている。
近年、欧米では再エネの取引にブロックチェーン技術を活用する取り組みが活発化しつつある。ドイツでは1月、電力大手のRWE傘下の再エネ事業者であるイノジー(Innogy)社が、電気自動車への充電時の課金決済にブロックチェーン技術を活用する実証試験を開始すると発表した。
米国では、ニューヨークのブルックリン地区で、太陽光発電による電力を個人間で取引するためにブロックチェーン技術を活用するマイクログリッドのプロジェクトが進められている。